ロバート・ラングランズ(Robert Langlands)が提唱するLanglandsプログラムは、「数論的対象を表現論・幾何・解析で読み替えることで、深い未解決問題を解決できるのではないか」という予想的・統一的ビジョンです。
🧑🏫 Robert P. Langlandsロバート・ラングランズ
項目 | 内容 |
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氏名 | Robert Phelan Langlands(ロバート・フェラン・ラングランズ) |
生年月日 | 1936年10月6日 |
出生地 | カナダ・ブリティッシュコロンビア州 ニューベストミンスター(New Westminster, B.C.) |
国籍 | カナダ人(後にアメリカの学術機関でも活動) |
主な所属 | プリンストン高等研究所(IAS)、イェール大学など |
📜 論文発表地・最初のインスピレーション
- 1967年の冬休み、当時プリンストン大学に在籍していたランズランズは、著名な数学者 アンドレ・ヴェイユ(André Weil) に宛てた 長い手紙 の中で、自身の構想を述べた。
- これはのちに**「ラングランズの手紙」**として知られ、Langlandsプログラムの出発点となる。
- 1969年:彼の論文 “Problems in the Theory of Automorphic Forms”(保型形式の理論における諸問題)が、Langlandsのビジョンを公式に提示した。
🧩 提唱した定理・理論
🧠 Langlandsプログラム(Langlands Program)
- ガロア群の表現と保型表現(もしくは自動表現)との対応を主張する統一理論。
- 対象:
- 数論的構造:ガロア群、L関数、モチーフ
- 解析・代数的構造:保型形式、自動表現、表現論
🔄 Langlands対応(Langlands Correspondence)
- 局所Langlands対応(Local Langlands Correspondence)
- 大域Langlands対応(Global Langlands Correspondence)
📏 関連する定理や公式
- 特定の「定理」や「公式」というより、「巨大な対応関係=哲学」として扱われます。
- 例:GL(2)上のLanglands対応 → 楕円曲線とモジュラー形式の関係
- Langlands L関数、ε因子などの「局所因子」は、深い解析的構造を持つ。
🔬 数学的証明・発展
Langlands自身がすべてを証明したわけではなく、彼の予想はその後の研究者たちによって部分的に証明・拡張されてきました:
対応 | 証明した数学者 | 内容 |
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GL(2) の場合 | アンドリュー・ワイルズら | 楕円曲線 ↔ モジュラー形式(→ フェルマーの最終定理) |
局所Langlands対応(GL(n)) | ハリス、テイラー他 | p進体上の対応(2001年頃) |
幾何Langlandsプログラム | ベズリンソン、ドリンフェルト他 | 代数幾何・物理への応用的展開 |
🧩 残存課題・未解決の部分
- 一般のレデュークティブ群(GL(n)以外)におけるLanglands対応の完全な定式化と証明
- モチーフと保型表現の対応の完全な構成
- Langlands L関数の解析的性質の一般的理解
- 幾何Langlandsにおける量子場理論との一致(物理との関係)
⏳ 歴史的重要性
- 20世紀後半〜21世紀の数学の統一理論の中心
- 数論、代数幾何、表現論、解析学、さらには物理学(ゲージ理論、S-dualityなど)にも波及
- 「現代数学のグランド・ユニファイド・セオリー(GUT)」と呼ばれることもある
🏆 受賞歴
年 | 賞 | 備考 |
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1996年 | Leroy P. Steele Prize | AMSから業績に対して |
2005年 | Nemmers Prize in Mathematics | ノースウェスタン大学から |
2007年 | Shaw Prize(ショウ賞) | 数学界のノーベル賞的存在 |
2018年 | アーベル賞(Abel Prize) | 「Langlandsプログラムの構想」に対して |
🧭 補足:幾何Langlandsとの関係
- 代数幾何版のLanglands対応で、物理学のS-dualityと深く関係している
- Edward Witten(物理学者)やBeilinson、Drinfeldらが主導
- フィジカル・Langlandsとも呼ばれる領域が発展中