Attention Centric Economy™|Highest AttentionとLeast Action Structure™の特定

今世紀で最も急激に売上を伸ばしたのはAmazonであり、日本円にして100兆円の年商をもつ。Amazonの顧客に対する公式なステートメントとして、「Customer Obsession(顧客へのこだわり)」 という理念が最も代表的だ。以下のようなメッセージが公表されている。
Amazonの顧客に対する公式なステートメント
- “We start with the customer and work backwards.”
(私たちは顧客からスタートし、逆算して物事を考えます。) - “Our vision is to be Earth’s most customer-centric company.”
(私たちのビジョンは、地球上で最も顧客中心の会社になることです。) - “Customer Obsession is our first leadership principle.”
(顧客へのこだわりは、私たちの最初のリーダーシップ原則です。) - “We’re not competitor obsessed, we’re customer obsessed.”
(私たちは競合を気にするのではなく、顧客を気にします。) - “We innovate on behalf of our customers.”
(私たちは、顧客のためにイノベーションを起こします。)
Amazonの「リーダーシップ原則」でも顧客を最優先
Amazonの Leadership Principles(リーダーシップ原則) の最初に掲げられているのが 「Customer Obsession(顧客へのこだわり)」 です。
Customer Obsession(顧客へのこだわり)
Leaders start with the customer and work backwards. They work vigorously to earn and keep customer trust. Although leaders pay attention to competitors, they obsess over customers.
(リーダーは顧客からスタートし、逆算して考えます。彼らは、顧客の信頼を得て、それを維持するために努力します。リーダーは競争相手を意識しますが、何よりも顧客にこだわります。)
AWSにおける顧客ステートメント
AWS(Amazon Web Services)もまた「顧客中心」を掲げていますが、B2B向けに以下のようなメッセージを発信しています。
- “AWS customers are at the center of everything we do.”
(AWSのお客様は、私たちのすべての活動の中心にあります。) - “We listen, learn, and build what customers need.”
(私たちは、顧客の声を聞き、学び、必要なものを構築します。) - “Customer obsession means relentless focus on delivering value.”
(顧客へのこだわりとは、価値を提供することに執拗に集中することです。)
Amazonの顧客向けステートメントは一貫して 「Customer Obsession(顧客へのこだわり)」 を核とし、
✅ 顧客から逆算して考える(Start with the customer and work backwards)
✅ 競争ではなく、顧客にフォーカスする(Not competitor obsessed, but customer obsessed)
✅ 継続的な価値提供を追求する(Relentless focus on delivering value)
という考え方を貫いています。
これは、Amazonのリテール事業(B2C)だけでなく、AWS(B2B)にも適用される理念だが果たしてこれで現代的な組織が動くだろうか。
Customer Obsessionは本当に普遍的なメッセージングか?
時代を超えたメッセージングを打つことでMeta-Semanticに、Meta-SpaceTimeに物事を動かすとすると、Customer Obsessionが単なる現代のLocal Minimumになっていないか検証する必要がある。TANAAKKとしてはCustomer Centricの上位概念として、Attention-Centricをおいている。
Attention-Centricとは、意思が物事を動かすということだ。つまり、意思を持っている人は顧客の中にいない可能性があるということも言える。興味、注目、魅力という意味にも言い換えられる。最もそのプロダクトに愛着があったという意味ではAppleのAttention-Centricはスティーブ・ジョブズであっただろう。Appleはユーザーのための製品を作ったわけではなく、スティーブジョブズが作りたい世界を作ったと言える。つまり、Attentionは変わらないが、誰がHighest Attentionを持つのかは時代や流行によって変わってしまう可能性が高いと言えるのだ。このような
1. 主権の主体はAttention Centric Economy™で変わるか?
主権(決定権や影響力)は、時代とともに変化するが、それを「Highest Attention(最も高い注意・集中が集まるポイント)」として特定すれば、エネルギーが最も高い場所が市場や権力の重心になる という視点は普遍的に適用できると考えられる。
- 時代ごとの主権の変遷
- 封建時代 → 貴族や王(特権層)が最高の注目を集める
- 民主化時代 → 市民の集団的な注目が力を持つ
- デジタル時代 → Attention Centric Economy™(意志中心経済)はの中で、個々の関心やデータが力を持つ
つまり、時代によって「主権の主体(Who holds the power?)」は変わるが、「Highest Attention」を持つ者が最もエネルギーを持ち、影響力を持つ という原則は変わらない。
2. Attention Centricでユーザーをどう定義するか?
人間の視点で市場を整理すると、「ユーザー」「Beneficial Owner(最終受益者)」「バイサイド(買い手)」「セルサイド(売り手)」といった概念が揺れ動く。
例えば、補助金や低金利融資が主流の日本の住宅市場、医療、建設などの領域では、最終支払主体が消費者であり、受益者が消費者であるべきだが、政府、銀行、中間業者、ユーザーのハブになっており、最もAttentionが集まっている主体が最高権限を持つ。例えば、住宅市場ではディベロッパー、医療では医療法人、建設ではディベロッパーとゼネコンといった具合に最終消費者へAttentionが集まるわけではない。住宅購入者にとっては住宅は30年に1度くらいしか訪れない人生で一度きりの決断であって、人生で一度きりの決断についてずっと考え続け、Attentionを維持し続けるのは難しいのだ。
「Attention Centric」で整理すると、エネルギー(影響力)を持つ主体がはっきりする というメリットがある。
- Attentionが最も高いのは誰か?
- 一般的な「ユーザー(消費者)」は、多くの注意を払っているが、影響力が分散している
- パーユーザー(Per-User Attention) が高い個人(インフルエンサー、アクティブユーザー)は市場の動向を左右しやすい
- Company Beneficial Owner(企業の最終受益者) や Board Directors(取締役会) は企業の資本配分や意思決定において「Highest Attention」を集める存在になる
→ つまり、Attention Centricな視点では、最終的に「誰の注意が市場や意思決定を動かすか?」で市場の構造を整理することができる。Amazonがこの時代においてHighest Attentionを集めている小売業におけるバイヤー(消費者)をターゲットにしたが、30年前には製造業や卸売業がサプライヤーとしてのAttentionの力を持っていたかもしれない。
3. 普遍的な概念は一般人には分かりづらいが、理解させることはそれほど重要なことではないのでは?
✅ 普遍的なフレームワーク(例:Highest Attentionを持つ主体を特定する)を整理することは、市場や社会の変化を理解するために極めて重要。
✅ ただし、そのフレームワークを一般の人が理解しやすい形で翻訳することも必要。
- 例えば、「Attention Centricな社会では、影響力は単に資本(お金)ではなく、注目が集まる場所に集中する」と説明されるよりも、「世界で一番Customer Centricな企業にする」という方がわかりやすい
- 真実はメタセマンティクスであり、言語表現を超えたところに存在するので、端的にはわかりづらい
- 誰にとってもわかりづらいが、機能しており、伝わるということは、財務業績を見ていれば気づくこともある。(例えば、NVIDIAのビジネスモデルがわかりやすいと思っている人はどのくらいいるだろうか)
- 実際の市場や経済を分析し、ビジネス戦略を考える際には、「Highest Attention」を軸に市場構造を整理することが、意思決定の精度を上げるために不可欠。容易に下位概念を使ってしまうと、賞味期限が切れた時にターンアラウンドするのが難しい可能性もある。(需給が反転し、供給制限が始まった時、Customer Centricだとマージンが取れない。実際にAmazonはCustomer Centricにしてしまったことにより、Amazon.com単体では低マージンのビジネスしか作ることができず、Highest Attentionがカスタマーには存在していないビジネスオーナーセントリックなAWSに移転し純利益を増加させている。その意味ではAmazonはすでにCustomer Centricの会社ではなく、Attention Centricな会社に移行済みだということができる。
4. Attention Centric Economy™
- 主権の主体は時代とともに変化するが、Highest Attentionを持つ場所を特定することで、エネルギーの集中点を把握できる。
- Highest Attention を掴むためのLeast Action Structure™を構築すべき
- Attention Centricな整理をすると、「誰が本当の影響力を持つのか?」が明確になり、市場や組織のダイナミクスを捉えやすくなる。
- 普遍的な概念を整理することが理解の上位にある。機能しており、効果が出ているのであれば、理解は二の次にして良いというのが科学の姿勢である。(Science Based Decision Making™)