ヴァスバンドゥ Vasubandhu 天親(てんじん)

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ヴァスバンドゥ Vasubandhu 天親(てんじん)

ヴァスバンドゥ(Vasubandhu、日訳:天親(てんじん)、4世紀末〜5世紀)は、インド仏教における最も重要な思想家の一人であり、**「唯識思想の大成者」「仏教哲学の巨匠」**として東アジア仏教にも巨大な影響を与えました。

🧘‍♂️ ヴァスバンドゥとは誰か?

項目内容
名称サンスクリット名:Vasubandhu(ヴァスバンドゥ)中国名:天親(てんじん)
活動時代4世紀末〜5世紀(グプタ朝期)
出身地ガンダーラ地方(現在のパキスタン北部)
兄弟アサンガ(無着):唯識思想の創始者。兄
学派変遷初期は説一切有部 → のちに大乗仏教(唯識派)に転向
主要思想唯識無境」(=あらゆる存在は識の働きに過ぎない)「三性説」「八識説」「阿頼耶識」など

📚 主な著作と貢献

代表作内容・意義
『阿毘達磨倶舎論』説一切有部のアビダルマ哲学を総整理。後に自身で乗り越える。
『唯識三十頌(唯識三十頌論)』唯識学の核心を短頌でまとめた名著。
『浄土論(往生論)』阿弥陀仏の浄土に往生する方法を短い偈で示す。曇鸞・親鸞に大きな影響。
『仏性論』『十地経論』菩薩道や仏性思想を深め、如来蔵思想にも貢献。

🌀 ヴァスバンドゥの思想の中核:唯識思想

概念内容
唯識無境外界に独立した「物」はなく、認識(識)だけが実在
三性説あらゆる存在は「遍計所執性(虚構)」「依他起性(因縁)」「円成実性(真理)」の3つの面を持つ
八識説認識には「眼耳鼻舌身意」の6識に加え、末那識・阿頼耶識がある
阿頼耶識(あらいやしき)深層無意識。過去の業や習慣が蓄積された識。輪廻・業の連続性の基盤

→ これらは後に東アジア(特に日本・中国・チベット)の仏教哲学・心理学の基礎になった。

🔗 浄土教との関係:『浄土論(往生論)』

  • 晩年には阿弥陀仏の本願による救済思想に傾倒し、**『往生要訣』(浄土論)**を執筆。
  • この短い偈(ぎ)を後に曇鸞が註釈し、親鸞が受け継ぐことで、東アジアの浄土教に大きな流れを作る。

✅ 結論

ヴァスバンドゥ(天親)は、インド仏教における“知の極点”を担った人物であり、
唯識哲学と浄土教という理性と信仰の両輪を持ち合わせた仏教の構造変革者である。
彼の思想は、空海・最澄・親鸞・道元ら日本仏教のすべてに思想的基盤を提供している。