Naturphilosophie|自然哲学
「Naturphilosophie(ナトゥールフィロソフィー)」は、18世紀末から19世紀初頭のドイツにおいて発展した自然哲学の一潮流で、特に**ドイツ観念論(German Idealism)およびロマン主義(Romanticism)**と深く結びついています。以下のような体系的特徴をもっています。
🔷 1. 定義と基本的立場
- Naturphilosophie は直訳すると「自然哲学」ですが、現代的な意味での「自然科学」とは異なり、自然そのものを精神や理念の発現として哲学的に理解しようとする試みです。
- 主に自然と精神、主観と客観の統一を目指します。
🔷 2. 主な提唱者と影響
哲学者 | 主な関心領域 | 特徴 |
---|---|---|
フリードリヒ・シェリング(F.W.J. Schelling) | 自然哲学・体系哲学 | 自然は「可視化された精神」であり、精神は「不可視の自然」と主張。 |
ヘーゲル(G.W.F. Hegel) | 弁証法・絶対精神 | 自然は絶対精神の一段階であり、その発展として捉える。 |
ノヴァーリス、ゲーテ | 詩・科学・植物形態学など | 芸術と自然、感性と理性の合一を追求したロマン派的自然観。 |
🔷 3. 自然哲学の体系的構造
◾ 一元的弁証法的体系
- 自然界を精神的プロセスとみなす
- 自然は静的な物体の集まりではなく、動的・有機的な生成の過程
- 二元論の超克
- 主体(主観)と対象(自然)の区別を超え、**両者の根源的統一(Urgrund)**を探る
- 全体性(Totalität)の重視
- 部分的理解よりも、自然全体を有機体的統一体として捉える
◾ 数学・物理から生物学への階層的発展
Schellingは自然の展開を次のような階層で捉えました:
- 力学(Mechanik):最も基本的な運動原理
- 化学(Chemie):相互作用と統合のプロセス
- 有機生命(Organik):自己生成・自己組織化する自然
- 精神(Geist):自然の最高の表現、自由と意識を持つ存在
🔷 4. 現代との関連・批判
◾ 与えた影響
- ホルダーリン、ハイデガー、ホワイトヘッド、メルロ=ポンティなどの自然観や現象学的思想に影響
- 現代システム理論、複雑系科学、生態思想、ガイア理論などとの親和性あり
◾ 批判と限界
- 神秘主義・詩的傾向が強く、経験科学との整合性に乏しいとの批判
- 非可証性:理論の反証可能性が低く、科学的厳密性に欠ける