生物の「分類原則」「命名規則」
🔬 生物学における分類の専門分野名:
分野名(英語) | 日本語名 | 説明 |
---|---|---|
Taxonomy | 分類学 | 生物を命名し、分類する学問。ラテン語の学名などを決める。 |
Systematics | 系統分類学(系統学) | 生物の進化的関係(系統)に基づいて分類体系を構築する。 |
Phylogenetics | 系統解析学 | DNAや形態から進化的な系統樹を作る手法・理論。 |
生物の分類(ドメイン〜種)というカテゴライゼーションは、biology(生物学)の中核的な一分野である taxonomy(分類学)・systematics(系統学) に属します。
📌 関連する用語
用語 | 意味 |
---|---|
Biological classification | 生物分類(general term) |
Hierarchical classification | 階層的分類(ドメイン〜種) |
Cladistics | 分岐分類学(共通祖先に基づく系統樹) |
◆【分類と命名のルールの概要】
階層 | 名称 | 命名規則の例 | 規則・原則 |
---|---|---|---|
ドメイン | Domain | Eukarya, Bacteria, Archaea | 分子系統学に基づく(rRNA解析など) |
界 | Kingdom | Animalia, Plantae など | ラテン語。学派により分類数が異なる |
門 | Phylum / Division(植物) | Chordata(脊索動物門) | 動物と植物で表現が異なる |
綱 | Class | Mammalia(哺乳綱) | 「-ia」で終わることが多い |
目 | Order | Primates(霊長目) | 「-ales」で終わることが多い |
科 | Family | Hominidae(ヒト科) | 「-idae」(動物)、植物では「-aceae」 |
属 | Genus | Homo(ヒト属) | 名詞形・頭大文字、斜体 |
種 | Species | Homo sapiens | 属+種小名の「二名法」、斜体、種小名は小文字 |
◆【命名に関する国際規則】
分類や命名には以下の国際的な命名規約(コード)が使われます:
規則名 | 対象 |
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ICZN(国際動物命名規約) | 動物 |
ICN(国際植物命名規約) | 植物・菌類・藻類 |
ICNB(国際細菌命名規約) | 細菌・古細菌 |
ICTV(国際ウイルス分類命名委員会) | ウイルス |
これらに従わない名前は学名としては無効です。
◆【種の分類における原則】
- 二名法(Binomial nomenclature)
- 属名(大文字)+種小名(小文字)で記述
- 例:Homo sapiens
- 両方とも斜体(手書きでは下線)
- 優先原則(Priority)
- 同じ種に複数の名前があった場合、先に命名されたものが有効
- タイプ標本(Type specimen)
- 新種を記述する際は、**代表となる標本(Type)**が博物館などに保存され、定義の基準となる
- 系統的分類原則(Cladistics)
- 分類階層は**単系統群(monophyletic group)**を優先。共通祖先をもつすべての子孫を含む群。
◆【補足:分類の階層の柔軟性】
- サブ階層(例:亜目=Suborder、上科=Superfamily)など、より細かい分類も存在します。
- 研究分野ごとに使い方が異なることもあります(特に原生生物や微生物分類)。
◆ 過去50年の新種発見数の推移(概要)
世界では毎年一定数の新種が発見・記載されていますが、分類学者や技術の発展、予算・探索対象によりばらつきがあります:
年代 | 年間新種記載数(概算) | 傾向 |
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1970年代 | 約10,000種/年 | 熱帯探査や昆虫中心の分類が活発化 |
1980〜90年代 | 約12,000〜15,000種/年 | DNA解析の初期応用。深海探査など進展 |
2000年代 | 約15,000種/年 | 国際的な生物多様性プロジェクト進行 |
2010年代 | 約18,000〜20,000種/年 | メタゲノム解析・微生物分類が急増 |
2020年代 | 約15,000〜20,000種/年 | 微生物と昆虫の記載が継続的に増加中 |
※特に新種が多いのは昆虫・真菌類・海洋無脊椎動物・熱帯植物・微生物
◆ 国際的な生物分類データベース
以下のデータベースは、全世界の生物の命名・分類・分布を集約しています:
1. Catalogue of Life(CoL)
- 世界最大級の種カタログ
- 約200万種を収録、年1回以上更新
- https://www.catalogueoflife.org
2. GBIF(Global Biodiversity Information Facility)
- 生物種の出現記録・観測データの集積
- 全世界の標本・観察・DNA記録と連携
- https://www.gbif.org
3. ITIS(Integrated Taxonomic Information System)
- アメリカを中心とした分類情報
- CoLやGBIFとデータ連携あり
4. WoRMS(World Register of Marine Species)
- 海洋生物種に特化した分類カタログ
- 深海生物や稀少種の記録が豊富
- https://www.marinespecies.org
◆ まとめ
- 地球の生物分類は加速的に進んでいるが、未発見種の方が圧倒的に多い。
- 生物データの集約とAI解析により、今後も毎年数万種規模で分類数が増える見込み。
- 国際的にはCatalogue of LifeやGBIFが中心的な情報源。