Record Bale|レコードベイルのスーツ製造工程
🧵 Super 表記の意味(IWTO基準)
Super 等級 | 最大繊維径(μm) | 特徴 |
---|---|---|
Super 80s | 約19.75 μm | 一般的なビジネススーツレベル(頑丈) |
Super 100s | 約18.75 μm | 柔らかさと耐久性のバランス |
Super 120s | 約17.75 μm | 高級既製スーツにも使われる定番 |
Super 150s | 約16.25 μm | かなり高級、ビスポーク用途多い |
Super 180s | 約14.75 μm | 極上の肌触り、耐久性はやや落ちる |
Super 200s | 約13.75 μm | 超高級クラス(Zegna, Scabal等) |
Super 250s | 約11.25 μm | IWTO公式規格の最上級 |
Super 260s〜300s | 10.75〜8.75 μm(非公式) | Zegna “Vellus Aureum”やRecord Baleレベル |
現代のウール生地製造においては、CAD(Computer-Aided Design)および CAM(Computer-Aided Manufacturing)技術が、特に「ベールから製品用の生地へと加工する後工程」で広く活用されています。
ただし、メリノウール加工には複数の段階があり、CAD/CAMが使われるのは主に「織布設計」以降の工程です。以下に工程ごとに解説します:
🐑 メリノウール生地製造工程とCAD/CAMの活用
工程ステージ | 内容 | CAD/CAMの使用有無 |
---|---|---|
① ベール選別・開繊 | ベールを解いて選別し、異物・粗毛を除去 | ❌ 主に手作業・スクリーニング機械 |
② 洗毛・カーディング | 洗浄 → 繊維を梳く → スライバー化 | ❌ 基本は物理処理ラインで制御 |
③ コーミング・紡績 | 梳毛(combed)→ 糸に撚る | ❌ 紡績機による自動制御(CADは使わない) |
④ 織布設計(パターン設計) | 織りの構造、柄、密度、番手設計 | ✅ CADが活躍(織り設計ソフト使用) |
⑤ 織機制御(工業生産) | 機織り機の制御 | ✅ CAMでパターン自動織り |
⑥ 仕上げ加工(縮絨・プレス等) | 風合いや寸法の調整処理 | ✅ 自動制御によるCAM的処理あり |
💡 具体的なCAD/CAM活用例
✅ 織布CAD
- 代表ソフト:NedGraphics, Textronics, ArahWeave など
- できること:
- 糸密度、経緯糸の交差設計
- 柄パターン、色配置の設計
- 縮絨後の出来上がりシミュレーション
✅ 織機CAM(製造制御)
- ジャカード、エアジェット、レピア織機に直接連動
- デジタルパターンをCAMで機械に送り、自動織布
✅ テーラー用CAD/CAM(生地→製品)
- テーラーやアパレルメーカーで:
- Gerber, LectraなどのCADで型紙を作成
- CAMによって自動カッティングプロッターで裁断
🧠 結論
✅ メリノウールの「ベール→生地→スーツ」までの過程において、CAD/CAMは「織布設計・機械制御・裁断」などの後工程で非常に重要な役割を果たします。
とくにZegnaやLoro Pianaのようなトップブランドでは、クラフツマンシップ × テクノロジーの融合として高度に統合されています。
🧵 メリノウール加工の工程①〜③と人の関与レベル
工程ステージ | 内容 | 自動化度 | 人の関与 |
---|---|---|---|
① ベール選別・開繊 | ベールを解いて分類、粗悪繊維や異物を除去 | ◯ 半自動化 | ✅ 強い(専門家判断) |
② 洗毛(スカワリング) | ウールに付着した脂、泥、草などを除去 | ◎ 高度自動 | 🔸 監視/調整のみ |
③ カーディング&コーミング | 繊維を整列させ、スライバー(ロープ状)に加工 | ◎ 高度自動 | 🔸 設定・品質管理のみ |
✅ ① ベール選別・開繊(人の関与が最も大きい)
- ウールバレル(bale)には、農場・部位・色調・繊維の粗さの違いが混ざっているため、
- 熟練者が視覚・触覚で選別する工程が今も不可欠です。
- ZegnaやLoro Pianaクラスの製品では、この段階で**人間の判断が“品質の鍵”**を握ります。
👉 目利きが必要な工程=手作業中心
✅ ② 洗毛(Scouring)
- 工場では、**連続式洗毛ライン(洗浄→脱脂→乾燥)**が導入されており、
- 温度、pH、流量はすべて自動制御。
- 人は主に「泡立ち」「残留脂」「洗浄ムラ」などをモニタリング・調整。
👉 基本自動だけど、熟練者の見守りは重要
✅ ③ カーディング&コーミング
- 機械が高速で繊維を櫛通し、並列化し、異常繊維(ノイル)を排除。
- OFDA/Laserscanなどによる自動計測連動もあり、ミクロン管理がリアルタイムで可能。
- 人は設定値の調整や最終品質の抜き取り確認に関与。
👉 高度自動化済だが、調整者は必須
🧠 結論
工程①(選別)=職人の経験と判断に大きく依存する手作業主体
工程②③=高性能機械による自動化+職人による品質監視が基本
特にZegna・Loro Pianaなどの世界最高級クラスの生地では、機械×人のハイブリッドによって「真の品質」が保証されているのが実情です。
非常に良いご質問です。
レコードベイル(例:10.6μm)を落札してから、最終的にオーダーメイドスーツとして顧客に出荷されるまでの全プロセスを、以下に工程順・機械/手作業の分類付きで詳しく解説します。
🧵【レコードベイルのスーツ製品化フロー】
工程No | 工程名 | 内容 | 機械/手作業 |
---|---|---|---|
① | ベール受領・ラボ分析 | 繊維径、強度、均一性、色調などの品質分析 | ✅ 機械(OFDA, Laserscan)+ ✅ 手作業(サンプリング) |
② | 選毛・開繊 | 異繊維・粗毛・混入物を手で除去、ブレンド調整 | ✅ 手作業主体(職人による選別) |
③ | 洗毛(スカワリング) | ウール脂、泥、草を洗浄・乾燥 | ✅ 高度自動化ライン |
④ | カーディング・コーミング | 繊維を整列化・短繊維除去・スライバー生成 | ✅ 高度自動化ライン(品質調整に職人関与) |
⑤ | 紡績(撚糸) | 梳毛糸に加工(極細番手:Super 250s〜) | ✅ 自動(細番手対応スピンドル)+ 🔧熟練調整 |
⑥ | 織布設計 | 柄・密度・番手設定(例:平織, 綾織) | ✅ CAD(ArahWeave, NedGraphics等) |
⑦ | 機織り | 織機による布地の自動製織 | ✅ CAM制御ジャカード/レピア織機 |
⑧ | 仕上げ加工 | 縮絨、起毛、プレス、蒸気処理、整理 | ✅ 機械+熟練工の風合い調整 |
⑨ | 着分裁断 | スーツ1着分(150cm幅×3.5〜4.0m)にカット | ✅ 機械(自動裁断)または ✅ 手作業 |
⑩ | テーラリング(縫製) | オーダーメイドに応じたスーツ仕立て | ✅ ほぼ手作業(フルハンド or ハンド+ミシン) |
⑪ | 最終検品 | 寸法・縫製・外観の品質チェック | ✅ 手作業(検品士) |
⑫ | 梱包・出荷 | 顧客名・証明タグ・布パスポート添付 | ✅ 手作業(NFC・Aura Blockchain登録) |
🔍【手作業 vs 機械 工程分類まとめ】
種別 | 主な工程 |
---|---|
🖐 手作業主体 | ②選毛、⑩縫製、⑪検品、⑫梱包・証明 |
⚙️ 機械主体 | ③洗毛、④カーディング、⑤紡績、⑦織布、⑧仕上げ |
💡 ハイブリッド(手+機械) | ①分析、⑥織布設計、⑨裁断 |
🎁 特記事項:レコードベイルの場合の特別対応
- 追跡性:1着ごとに「どのベールから来たか」をトレーサビリティ管理(NFCチップ・Aura Blockchain)
- タグ付け:「Record Bale」「Super 250s+」「限定●着」などの専用ラベルを付与
- 最終仕立て:ZegnaやLoro Pianaではフルオーダー/メイドトゥメジャー専用の職人ラインで縫製
🧠 結論
✅ レコードベイル10.6μmの製品化は「機械による高精度工程」と「職人による審美・精度判断」が融合したプロセスです。
とくに原毛選別・縫製・検品・パッケージングは、いまなお人の目と手が品質を決定づけている工程です。