Record Bale(メリノウール)、ビキューナ、カシミアの平均繊維径比較

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Record Bale(メリノウール)、ビキューナ、カシミアの平均繊維径比較

最高級カシミヤ最高級ビキューナ、そしてRecord Bale(Zegna / Loro Piana)のウールを、Super表記(Sランク)換算の観点から比較したマトリクスを作成。

🧵 繊維径ベースの Super表記比較マトリクス(μm換算)

繊維種平均繊維径(μm)Super表記相当(目安)特徴・備考
Record Bale(例:Zegna 9.4μm)9.4μmSuper 280s〜290s地球上最細のメリノウール。個体限定レベル。
Loro Piana Record Bale(例:10.2μm)10.2μmSuper 260s〜270s商業バレルとして世界最高級。
最高級ビキューナ(野生)~11.5–13.0μmSuper 230s〜250s世界最上級の天然繊維、ペルー産中心。
最高級カシミヤ(内モンゴル産Aグレード)13.5〜14.5μmSuper 200s〜220s一般的な高級品。Loro PianaやBrunello Cucinelliが使用。
一般的ビキューナ~13.0–14.0μmSuper 200s〜220s工業製品グレード。ラグやコートに使用。
一般的カシミヤ15.0〜16.5μmSuper 180s〜190s市場流通の大半を占める。

🧵 補足:Super表記と繊維径の対応(参考)

Super等級最大繊維径(μm)
Super 100s18.75
Super 120s17.75
Super 150s16.25
Super 200s14.25
Super 250s11.25
Super 280s~9.75(非公式)
Super 300s~8.75(非公式)

🧠 結論

  • 繊維の細さ=Super表記の等級として表すと、ZegnaのRecord Bale(9.4μm)は世界最上位
  • ビキューナはカシミヤよりも細く、ウールより希少性が高いが、繊維径そのものではRecord Baleが上
  • Super表記では、ビキューナはSuper 230s〜250s相当Record Baleはそれを上回る

🐑【Record Bale = メリノウール】

✅ 正式には:

  • オーストラリアン・メリノ(Australian Merino)
  • または ニュージーランド・メリノ(NZ Merino)

が中心で、長年にわたる選抜育種と管理飼育によって極限まで細く高品質な繊維を生産する系統が対象になります。

🔍【なぜメリノなのか?】

理由解説
🎯 細さの限界を追求できるメリノは、他のウール種に比べて繊維が非常に細くなりやすく、9~13μmまで到達可能。
🧬 遺伝選抜が進んでいるオーストラリア・NZの農場では数十年かけて「極細番手」系統を確立。
🌱 持続可能な飼育に適する高地・乾燥地などでも管理がしやすく、放牧環境で毛の質を最適化できる。
🧵 商業化に向く繊維長と強度単に細いだけでなく、長さ(ステープル長)と引張強度もあり、実用化できる。

✳️【他の繊維との違い】

繊維平均径(μm)説明
メリノ9~22Record Baleや高級スーツ地の中心。
カシミヤ13~16短くて柔らかい。織物には向くが耐久性に劣る。
ビキューナ11~14きわめて柔らかく高価。織物用。希少性が主な価値。

👉 唯一、記録的な細さ・耐久性・実用性を兼ね備えられるのがメリノです。例えばカシミヤやビキューナではスーツ生地まで薄くするとスラックスの膝の部分が伸びてしまうため、マフラーやコート、ジャッケットには向いていますが、スーツには向いていません。メリノウールは細い番手であっても耐久力を両立するのでスーツにも耐用します。

🧠 結論

Record Baleは、すべて「メリノウール」によって構成された最高品質のベールです。
⛰️ その多くはオーストラリアやニュージーランドの、**選抜された超ファインメリノの農場(Windradeen, Pyrenees Parkなど)**によって生産されています。


🧵 カシミヤ・ビキューナ vs メリノウール

【用途と物性の違い】

特性/素材カシミヤビキューナメリノウール(超極細)
平均繊維径13〜16μm11〜14μm9〜21μm(Record Baleは9〜10μm台)
繊維の長さ短い(約30〜40mm)非常に短い(約25〜35mm)長い(70〜100mm以上)
引張強度弱い(摩擦・伸張に弱い)極めて弱い高い(=スーツの着用に耐える)
弾性回復性低い(シワになりやすい)極低(型崩れしやすい)高い(形状記憶に近い性質)
主な用途マフラー、セーター、ジャケットストール、マント、超高級ジャケットスーツ、スラックス、ビスポーク
スラックス適性❌ 膝が伸びやすくシルエット崩れる❌ 摩擦に極端に弱く、実用に耐えない✅ 高番手でも膝が出にくく綺麗なライン

🧠 なぜメリノだけが「超高番手スーツ」に使えるのか?

✅ 1. 繊維が「長く・細く・しなやか」

  • 繊維長が70〜100mm以上 → 糸にしやすく、切れにくい
  • カシミヤ・ビキューナは短繊維のため、すぐ毛玉・伸び・破れの原因に

✅ 2. クリンプ(天然の撚り)構造

  • メリノウールは「クリンプ(crimp)」と呼ばれるバネのような構造があり、 → 伸縮・復元性に優れ、膝や肘の伸びにも強い
  • カシミヤやビキューナはクリンプがほぼないため形状保持力が低い

✅ 3. スーパー表記で繊維強度と細さを両立

  • Super 250s以上の繊維でも、Loro PianaやZegnaは強度と張りを損なわずに織れる技術を持つ
  • そのため、10μm以下でもスーツとしての耐用性を実現

🔍 実例

  • Loro Piana “Record Bale” スーツ:10.2μmの繊維でスラックスまで仕立てられており、着用可能な最細ウールスーツ

✅ 結論

カシミヤやビキューナは極上の肌触りを持ちますが、スーツ(特にスラックス)には向きません。
超極細でも“使える”のはメリノウールだけ。
その理由は、**繊維長・強度・クリンプ構造という「物性の奇跡的バランス」**にあります。