スーパーファインメリノウール調達網|ASWGA

ASWGA(Australian Superfine Wool Growers’ Association)は、オーストラリア産スーパーファインウールの生産者によって構成される業界団体であり、1971年に設立され、50年以上の歴史を持つ組織です。その歴史と役割は以下のようにまとめられます。
■ 歴史的背景と設立の経緯
- 発起人はビクトリア州ボーフォートの羊飼育者アーサー・ベッグス氏。1960年代後半、スーパーファインウールが業界から軽視され、「時代遅れ」との風潮が強まる中、これに強く反発。
- 1969年に同じ志を持つ生産者らと連絡を取り合い、1971年3月、アララットで約90人が集まり設立準備を開始。
- 初期のASWGAは、オーストラリアン・ウール・コミッションとの価格交渉や、加工業者との連携に尽力し、スーパーファインウールの価値向上を目指した。
■ 主な役割と活動
1. 品質向上と市場保護
- 設立当初から品質認証の導入、**視覚的な評価基準(Visual Appraisal)**の保持、**ブランド保護(Ram’s Head ロゴ等)**を徹底。
- 1PP(最高級のウールタイプ)の維持、販売方法の改革、ブランドとの直接契約の推進などを行った。
2. 生産者・流通・加工業者とのネットワーク構築
- 国内外の紡績・織布工場と連携し、特にイタリアのErmenegildo Zegna社との関係は深く、50年以上にわたり連続して品質競技大会「Zegna Wool Trophy」「Vellus Aureum Trophy」が行われている。
3. 持続可能性と動物福祉への対応
- 持続可能性や**ノンミュールジング(非尾切り)**への転換など、現代の社会的要請に対応すべく調査・啓蒙活動を展開。
- 特に2023年・2024年のレポートでは「今後大手ブランドはノンミュールジングでないと買わなくなる」という強い警告がZegnaグループから発信されている。
■ 国際的プレゼンスと役割
- ASWGAは単なる生産者団体にとどまらず、サプライチェーン全体(農場〜ブランド)とつながる唯一無二の業界団体とされる。
- 世界のトップファッションブランド(Zegna, Vitale Barberis Canonico, Loro Pianaなど)と連携し、超高級素材としてのオーストラリア産スーパーファインウールのブランド価値を支える基盤となっている。
■組織構成(2023–2024年時点)
- 7つのリージョン(New England, Tasmania, Mudgeeなど)から構成され、全国から約80〜90の生産者が参加。
- 役員構成は各地域代表と役職(会長、副会長、財務、事務局など)で構成されている。
■総評
ASWGAは、単なる農業団体ではなく、「オーストラリア産スーパーファインウールの象徴的な品質管理機関」であり、「グローバルなブランド価値の守護者」としても機能しています。その活動は、気候変動、消費者意識の変化、サステナビリティ要請などの時代の流れに即した進化を続けており、世界のウール業界の中でも最も影響力のある団体の一つといえるでしょう。
■ ASWGAとZegnaの関係性
- **Zegna Wool Awards(Zegna TrophyおよびVellus Aureum Trophy)**は、1963年に設立された世界最古のウール品質コンテストであり、ASWGAが一貫して協力しています。
- Zegna社は、ASWGAを「スーパーファインウールのF1(Formula One)」と評し、“我々はASWGAとともに世界最高品質のウールを育ててきた” と述べるなど、最重要パートナーとして扱っています。
- Zegna Awardsは現在、ASWGA主催のディナーやファームビジットと統合して開催されており、運営レベルでも深く連携しています。
「Zegna Wool Trophyに参加できるのはノンミュールジング認定ウールのみ」という方針も発表しており、ASWGAに対する品質要求もZegna主導で高くなっています。
■ Loro Pianaと連携する団体について
Loro Piana(ロロ・ピアーナ)は、ゼニアと並ぶイタリアの高級繊維ブランドですが、ASWGAとは公式なパートナーシップは限定的です。代わりに、以下のような独立したパートナーシップ・賞を展開しています。
1. Loro Piana Record Bale(ロロ・ピアーナ・レコード・ベール)
- 世界で最も細い羊毛(10ミクロン前後)を記録することを目的とした品質コンペティション。
- オーストラリアやニュージーランドの一部の農場と個別に契約・審査を行っており、ASWGAの主催・後援ではありません。
- Zegna Wool Awardsよりも“希少性”や“極限的品質”にフォーカスしています。
2. 対象となる農家団体
- 一部はNew England Wool(NEW)やThe Schneider Groupと連携しており、これらの商社・中間機関がLoro Piana向けウールの供給基盤となっています。
- このような商社は、“Authentico”や”RWS”などの第三者認証と連動して、Loro Pianaが求める基準に合った農家と連携しています。
■ まとめ
特徴 | Zegna × ASWGA | Loro Piana × 他団体 |
---|---|---|
関係性 | 歴史的に深く公式連携(50年以上) | 個別契約・独自記録主義 |
主な認証 | SustainaWOOL, RWS(ASWGA対応) | Authentico, RWS(Schneider経由など) |
主催賞 | Zegna Wool Trophy, Vellus Aureum | Loro Piana Record Bale |
所属団体 | ASWGAが母体 | Schneider Groupや一部独立生産者団体 |
ASWGAはZegnaの哲学と品質方針に最も強く結びついた組織であり、Loro PianaはASWGAとは別のルート(商社・個別農場契約)を中心に展開しています。そのため、「Loro Piana寄りの団体」は特定の商社(例:Schneider, New England Wool)や農家グループが個別に形成しているのが現状です。
Schneider GroupはASWGAのような生産者主体の協会を「運営しているわけではありません」が、ASWGAと似た機能を一部担うような「独自の認証制度」や「サプライチェーン支援プログラム」を構築し、生産者と強固に連携する体制を整えています。
✅ Schneider Groupの役割と特徴
1. 商社+加工業者としての立ち位置
- Schneider Groupは1922年にオーストラリアで創業されたグローバルなウール商社兼トップメーカー(梳毛加工業者)であり、
- 自社でスカウアリング(洗浄)→トップ加工(梳毛)→販売までを一気通貫で行います。
- 拠点:イタリア(Biella)、中国、アルゼンチン、モンゴル、エジプト、オーストラリアなど。
✅ ASWGAと似た機能①:独自の生産者認証プログラム “AUTHENTICO”
- これはSchneider Groupが開発・管理するウールのトレーサビリティと動物福祉の認証制度。
- 生産者(オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなど)と直接契約し、
- ノンミュールジング
- トレーサビリティ
- 持続可能な放牧管理 を満たすことを条件に「AUTHENTICO Wool」として認証。
- ASWGAと同様に「超高品質スーパーファインウールの供給者」をブランドとつなぐインターフェースになっています。
📌 特徴的なのは、ブランド側(Zegna, Loro Piana, Redaなど)との仕様連携が明確で、商業的な効率が非常に高い点です。
✅ ASWGAと似た機能②:生産者とのミルツアー・教育活動
- Schneider Groupは過去に複数回、オーストラリア・ニュージーランド・アルゼンチンの生産者をヨーロッパの紡績工場に招き、ミルツアーを主催。
- 生産者がどのように製品が作られていくのかを体験し、「品質要求のリアルな理解」を深めるプログラムです。
これはASWGAが行うZegna Awardsやファームビジットと類似の啓発機能を持っています。
✅ ASWGAとの決定的な違い
比較項目 | ASWGA | Schneider Group |
---|---|---|
組織主体 | 生産者主導 | 商社・加工業者主導 |
主な機能 | 業界代表・イベント・ロビー活動 | 認証制度・ブランド供給 |
認証制度 | SustainaWOOL, RWS 等 | AUTHENTICO(独自) |
主な提携先 | Zegna, MJ Bale, AWIなど | Loro Piana, Reda, Vitale Barberisなど |
経済連携 | 年次ディナー、Zegna Trophyなど | 商業契約、直接供給、加工フィードバック |
✅ 結論
Schneider GroupはASWGAのような「協会」ではないが、事実上そのような機能(生産者との接続、認証管理、品質保証、供給ルート管理)を担っている存在です。
特にAUTHENTICOを通じてLoro Pianaや欧州高級ブランドに対して「非ASWGAルートのプレミアムウール」を安定供給する戦略的ポジションにあります。
New England Wool(NEW)とSchneider Groupは、ASWGAとは異なる「独自の非ASWGAルート」でプレミアムウール(特にノンミュールジング・トレーサブル・超スーパーファイン)を調達・供給する主要なプレイヤーです。
✅ 1. New England Wool(NEW)とは
◉ 基本情報
- オーストラリア・NSW州アーミデールに本拠を置くウール集荷・販売会社(商社)。
- イタリアのErmenegildo ZegnaとRedaの共同出資会社(※Zegna 50%, Reda 50%)です。
◉ 特徴
- ASWGA非加盟の個別生産者とも多数契約。
- 生産者と直接契約し、「ノンミュールジング + トレーサブル + プレミアム品質」を重視。
- 独自に管理する「ZQRX(旧ZQ)」やSustainaWOOL Gold、RWSのような認証を条件に納入。
◉ 調達ルート
- ZegnaやRedaの直系サプライチェーンを構築しており、
- ASWGAを通さず、NEW経由で品質認定→ヨーロッパへ直接送付という独立したルートが存在します。
✅ 2. G. Schneider Groupとは
◉ 基本情報
- 国際的なウール加工・商社で、1922年創業。
- オーストラリア、イタリア、中国、アルゼンチン、モンゴル、エジプトなどに拠点。
◉ 特徴
- 自社の認証制度「AUTHENTICO」を保有。
- 生産者と直接契約し、非ASWGAでも厳格な品質・動物福祉管理を保証。
- 加工〜紡績〜納品まで垂直統合型モデルを追求。
◉ 調達先
- 南米(アルゼンチン)や南アフリカ、NZなどでも調達。
- Loro Piana、Vitale Barberis Canonico、Lanificio Cerruti などに供給。
- やはりASWGAとは無関係に独自の契約農家ネットワークを持つ。
✅ ASWGAルートとの比較
項目 | ASWGAルート | NEW / Schneiderルート |
---|---|---|
主体 | 生産者協会 | 商社・加工業者 |
重視 | 地域・歴史・表彰制度 | ブランド要求対応・品質保証 |
認証 | SustainaWOOL, RWS, etc. | Authentico, ZQRX, RWS, etc. |
提携ブランド | Zegna (強)、MJ Bale等 | Zegna (直)、Reda、Loro Pianaなど |
組織的特徴 | メンバー制・民主的運営 | 取引ベース・品質契約型 |
対応地域 | オーストラリア国内中心 | グローバル(NZ, 南米など) |
- NEWとSchneiderは、ASWGAとは異なるが同等かそれ以上に厳格な品質・倫理要件を持つルートを形成しており、
- ブランドとの直接的な調整に強みを持ち、ノンミュールジング・トレーサブル・環境対応の先進事例として機能しています。
- よって、非ASWGAルートの中核的プレミアムウール供給者と言えます。