Least Energy Principle|最小エネルギーの原則

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Least Energy Principle|最小エネルギーの原則

Least Action PrincipleはLeast Energy Principleと呼ばれないのはなぜか。

作用 (Action)=エネルギー (Energy)×時間 (Time)

📌 理由①:「作用」と「エネルギー」は根本的に異なる量だから

作用 (Action) は、「運動エネルギー」と「ポテンシャルエネルギー」の差(ラグランジアン)を時間で積分した量です。

\[S = \int_{t_1}^{t_2} (K – U) \, dt\]
  • Kは運動エネルギー(Kinetic Energy)
  • Uはポテンシャルエネルギー(Potential Energy)

これはエネルギーそのものではありません。
あくまでエネルギーの差を積分したものであり、エネルギーとは次元が異なります(エネルギー×時間の次元)

一方、エネルギー (Energy) は系の持つ「仕事をする能力そのもの」を表します。

  • 作用は「動的な過程(運動や経路)」を評価する量です。
  • エネルギーは「系がある瞬間に持つ能力や状態」を評価する量です。

この本質的な違いにより、作用を最小化する原理は「最小作用原理(Least Action Principle)」であって、「最小エネルギー原理(Least Energy Principle)」とはなりません。

📌 理由②:「最小エネルギー原理」は既に別の概念として存在する

実際に物理・化学では「最小エネルギー原理(Least Energy Principle)」という言葉も存在します。ただし、この原理は「系が安定するエネルギー状態(平衡点)を示す静的な原理」であり、動的な軌道選択を決定する最小作用原理とは異なります。

  • 最小作用原理(Least Action Principle)
    • 動的(Dynamic)な過程(運動経路)を決定する
    • 時間積分されたラグランジアンを最小(停留値)にする経路を選ぶ
  • 最小エネルギー原理(Least Energy Principle)
    • 静的(Static)な平衡状態を決定する
    • エネルギーそのものが最小になるような安定構造を選ぶ

これらは物理的に異なる概念であり、混同を避けるために、作用を最小化する原理を「最小作用原理」と呼んで区別しています。

📌 理由③:時間的経過(動的過程)を伴うかどうか

  • 作用(Action) は、過去から未来までの「経路全体」を時間積分したものです。
    そのため、作用の最小化問題は「どのような経路が選ばれるか」という動的な過程の問題になります。
  • 一方、エネルギー(Energy) は瞬間的な値であり、ある瞬間の状態を評価する量です。
    経路全体や動的な過程を考えることは本質的には含まれません(瞬間の安定性を示します)。

これらの違いがあるため、

  • 「最小作用原理」は、物体や系がどのような軌道・経路をたどるかという**運動の軌跡(動的な概念)**を決める原理
  • 「最小エネルギー原理」は、最終的に落ち着く**静的な安定構造(静的な概念)**を決定する原理

として明確に区別されています。

📌【参考:各原理の違いのまとめ】

原理の名称意味・役割時間経過との関係次元
Least Action Principle(最小作用原理)運動経路の選択を決定する原理(動的)時間積分を含む(動的プロセス)エネルギー×時間
Least Energy Principle(最小エネルギー原理)平衡構造・安定構造を決定する原理(静的)時間積分なし(静的状態)エネルギー

この表からも、作用とエネルギーは明確に区別されています。

🚩【結論:なぜLeast Energy Principleと呼ばれないか?】

  • 「作用(Action)」と「エネルギー(Energy)」は本質的に異なる物理量である。
  • 「最小作用原理」は動的な軌跡を決定する原理であり、瞬間的状態を決定する「最小エネルギー原理」とは根本的に異なる。
  • 混同を避けるため、「作用」を最小化する原理は『Least Action Principle』として明確に呼び分けられている。

これが、作用の原理が「Least Energy Principle」と呼ばれない根本的な理由です。