怒らない経営
私のTANAAKK経営方法
基本的には宇宙に役立つ叡智を残すということをTANAAKKは目的としていますが、よりミクロな領域で、毎日の経営の意思決定に関して、将来的には忘れてしまうかもしれないので、今気づいた時ということで記しておきます。
気の長い経営、生き物を育てるように
私はTANAAKKという企業を経営する上で、一貫して「気の長い経営」を心がけてきました。それは、組織を「機械」ではなく「生き物」として捉え、じっくりと時間をかけて育てていくスタンスです。
怒らない、焦らない、うろたえない
私の経営の基本は、「怒らない」「焦らない」「うろたえない」ということです。営業部門が目標数値を達成できなくても、投資先のスタートアップが経営判断を誤っても、さらには子会社の役員が横領したという深刻な問題でさえも、私は一度も怒りを表に出すことはありませんでした。むしろ、そのようなトラブルさえも組織の成長過程として捉え、冷静に状況証拠を収集し、大局的に対応してきました。ある時、雇用したエンジニアがリモートワークをすると言いながら、実際にはコンビニでアルバイトをしていたことが発覚したことがありました。このようなケースでも私は怒りませんでした。問題が生じた場合でも、感情的になるのではなく、チームに状況証拠の収集を依頼し、数学的な予測と量子的な観測による見極め、次のステップに向けた不可逆的な組織のシフトを実現することが大切だと考えているからです。
焼きなまし法による柔軟な評価
私は「怒らない、叱らない、焦らない」という穏やかなスタイルを取る一方で、人材評価や報酬に関しては非常に柔軟なアプローチを採用しています。その一つが「焼きなまし法(アニーリング)」を活用した人事評価です。
たとえば、成果が期待される重要なポジションにある社員については、実際に目に見える成果が出る前であっても、期待値(オプション価値)に基づいて基本給を先行して上げることがあります。
DCFによる意思決定
私の基本的な経営判断はDCF的(ディスカウンテッドキャッシュフロー方式)です。つまり、将来期待できる現金に対して割引率をかけて支出を決めています。
一方で、その後の実際の成果が期待に及ばなかった場合(場合分けによりオプション価値が下がる時)には、3ヶ月-6ヶ月程度という短いサイクルで基本給を柔軟に調整(引き下げ)することもあります。このような「温度を高めて柔軟に動かし、その後冷却し安定させる」という評価方法を通じて、組織全体が成果志向になり、自律的に最適化される環境を整えています。
つまり、非上場企業ではありますが、公開市場の株価並みに、毎日上下するDCFを各事業、各部門、各人物で見極めているということです。外注先にも基本的には同様のアプローチをとっています。
経営とは、辛抱強く育てること
組織という生き物を育てるためには、忍耐強く、感情的にならず、長期的な視点で柔軟に対応することが必要です。一方、体が病気にならないようにモニタリングすることは重要であり、それが経営の数字です。怪我をしないように予防策をとったり、万が一の場合に備えて事前に保険をかけておくことで、深刻な被害を未然に回避することができます。
短期的な問題に反応するのは誰もができることです。経営者の役割は短期的な情報に一喜一憂するのではなく、静かに時間をかけて見守り、状況に応じて必要な手を打つ。これが私がTANAAKKで実践している経営の基本です。
最も少ない情報で、最も重要な決断をするにはどうしたらよいか
経営者は情報を集めることを得意とするのではなく、他人よりも圧倒的に少ない断片的な情報から、整合性、真実性の高い意思決定をすることに長けていないといけないと思います。情報をくまなく集めて判断するならそれは誰にでもできることです。情報がほとんどないのに意思決定する方が難しい。
例えば、一度も対象企業のオフィスに訪問したこともないのに数十億円のM&Aの取引を決める。これは、王座が動くべきではないという考えからきています。自分が動くときは巨万の富が動くときです。王座にあるものが不用意に動くことは避けるべきです。
数学的ツール「代数、幾何、解析」
最も少ない情報で、最も重要な決断をするにはどうしたらよいか。つまり、数学的には代数、幾何、解析のテクニックを使います。少ない情報のインプットで、即座にモデル(幾何構造)を作り、モデル内で正数、負の数、実数を走らせます(代数)。これはちょうど、小学生の時にミニ四駆を改造させて何回も走らせ、空気抵抗を減らして省電力で最も早くコースを回れるかの改造実験をしていた時と感覚が似ています。そして、この代数を極大、極小、微分、積分と極値を導入することで負荷をかけます(解析)。これは時間を圧縮し、未来を先取りする感覚と似ています。
哲学的ツール群
これらの数学的テクニックの背後には哲学や論理の基本的なツールがあります。Ontology(存在論)、Category Theory(圏論)、Duality(双対性)、Functor(関手)、Topology(位相)などのツール群です。
過去を味方につける
これらは宇宙の138億年の歴史と、地球の46億年の歴史、哺乳類の2億3000年の歴史、人類の30万年の歴史によって生み出された、無料で、誰でも知ることのできるツール群です。わざわざ自分で開発したわけでもない、オープンソースです。自然発生したものが最も有用であり、あらゆる物質、素粒子は人間が計算するためのリソースとして活用することができます。
未来も味方につける
つまり、最も少ない情報で、最も重要な決断をするために必要なこと。それは自分の力を使わず、より大きな空間、自然の力を活用すること。自分の力を極小(つまり限りなくゼロ)に近づけるということです。解析とは、時間を圧縮し、未来を先取りする技術です。
偉大な企業は、偶然生まれ、自然と完成する
したがって、何が起きても怒らない、焦らない、狼狽えないということが実現できます。苦しむ、悲しむ、怒る、焦る、叱る・・・世の中の伝説的な経営者の本にはそのようなエピソードがたくさんありますので、そうしないと偉大な企業を作れないのかもしれないと思った瞬間が少しだけありましたが、それは幻想でした。偉大な企業は、偶然生まれ、自然と完成するのです。
トップが、組織が本来持つ自然な力の発揮を邪魔するようなことをしてはいけない。邪魔さえしなければ、会社はすくすくと育っていくというのが持論です。