Solid Mechanics|弾性理論
「弾性理論(solid mechanics, elasticity theory)」は、固体が外力や変位を受けたときに、どのように変形し、内部応力を発生させ、また元に戻ろうとするか(=弾性応答)を解析する理論です
🧱 弾性理論とは?
📌 定義:
「外力に対して形が変わるが、力が除かれれば元の形に戻る」性質(=弾性)を持つ物体の力学を扱う理論体系。
📘 応用分野:
- 建築・土木(橋、ビルの設計)
- 航空宇宙(翼やフレームの応力解析)
- 材料工学(応力-ひずみ関係)
- 医用工学(骨や人工関節の応力分布)
🧭 歴史的背景
時代 | 発展 | 主な人物 |
---|---|---|
17世紀 | 弾性体の初期研究(フックの法則) | ロバート・フック |
18〜19世紀 | 応力・ひずみの理論化 | オイラー、ナビエ、コーシー |
19〜20世紀 | エネルギー原理の導入 | ラグランジュ、カスティリアーノ、ケルビン |
20世紀 | 数値解析技術(FEM)の確立 | ゼィエンキービッチ他 |
🧮 弾性理論の数理的構成
1. 変位(Displacement)
物体の各点がどれだけ動いたか。
ベクトル場で記述される
2. ひずみ(Strain)
変位の「勾配」に対応。
線形弾性では小ひずみ理論がよく使われ、以下のように定義されます:
3. 応力(Stress)
内部の力の分布を表すテンソル
σij\sigma
例:単位面積あたりの力。
4. 構成方程式(Constitutive Law)
材料固有の法則。最も有名なのは:
\[\sigma_{ij} = C_{ijkl} \varepsilon_{kl} ]\]フックの法則(線形弾性)
ここで Cijkl は剛性テンソルで、材料特性(等方性・異方性など)を反映。
5. 運動方程式(平衡条件)
静力学では:
\[\frac{\partial \sigma_{ij}}{\partial x_j} + f_i = 0\](fiは体積力。重力など)
🔻 最小ポテンシャルエネルギーの原理との関係
弾性体に外力が加わったとき、その内部エネルギー(ひずみエネルギー)と外力の仕事の和が最小になるように物体は変形します:
δΠ=δ(U−W)=0
- U:ひずみエネルギー
- W:外力による仕事
- Π\Pi:ポテンシャルエネルギー関数
この変分原理を使って、**有限要素法(FEM)**で数値的に変形や応力を解析します。
🧠 よく出てくる名前・法則
名称 | 内容 |
---|---|
フックの法則 | 応力 ∝ ひずみ(線形の比例関係) |
コーシーの応力テンソル | 任意の面に作用する応力の記述方法 |
カスティリアーノの定理 | エネルギーの偏微分で変位を得る方法 |
セント・ヴナンの原理 | 応力の局所化の理論 |
ラメ定数 | 等方性材料の構成式に出る2つの定数(λ, μ) |
🧩 弾性理論の現代的応用
- ✅ トポロジカル最適化(材料の分布を最適化)
- ✅ ナノスケール(CNTやグラフェンの弾性)
- ✅ 生体材料のモデリング(骨・軟組織)
📌 まとめ:弾性理論の意義
弾性理論は、固体の変形と力のつり合いをエネルギー論的に解析できる枠組みであり、最小ポテンシャルエネルギーの原理と密接に結びついています。
現代の建設・製造・医療などあらゆる分野で不可欠な理論体系です。