Gödelの第一不完全性定理|証明可能性

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Gödelの第一不完全性定理|証明可能性

「証明可能性の階層性」は、数理論理学や計算理論の核心的なテーマであり、Gödelの不完全性定理、Turingの計算可能性理論、証明論などを貫いて現れる階層構造です。以下に体系的に説明します。

🔷 1. 証明可能性の基礎的枠組み

◾ 証明可能性とは

形式体系(たとえばペアノ算術 PA や ZFC)において、ある命題 φ がその体系から論理的に導かれる(=証明できる)ことを言います。

◾ Gödelの第一不完全性定理

  • 任意の無矛盾で十分に強い体系(PAなど)には、 その体系では証明できず、かつ偽でもない命題が存在する。
  • つまり、体系の内部からは捉えきれない命題がある。

🔷 2. 証明可能性と計算理論(チューリング階層)

◾ チューリング機械と決定可能性

  • 命題が「真であるか否か」をTuring machineが有限時間で判定できるとき、それは「決定可能(decidable)」。

◾ Turing Degree(チューリング次数)

  • 計算不能な問題には、計算困難さの段階がある。
  • 「Halting problem(停止性問題)」は最も基本的な計算不能問題であり、それを解くオラクルがあるとより難しい問題が解ける。
  • 各問題は「Turing Degree(チューリング次数)」という帰納的不可解さの階層に分類される。

例:

  • 0:計算可能な問題
  • 0′:停止性問題(= Turing jump of 0)
  • 0″:0′の停止性問題(より上位の階層)

🔷 3. 証明可能性と算術階層(Arithmetical Hierarchy)

これは命題の量化構造によって分類されます:

クラス形式内容の例
Σ₀ = Π₀量化なしx + y = z など
Σ₁∃x ϕ(x), ϕはΣ₀停止性問題など
Π₁∀x ϕ(x), ϕはΣ₀全称命題(反証困難)
Σ₂∃x ∀y ϕ(x,y)より複雑な停止性問題
  • 証明可能性(provability)は、Σ₁レベルの命題で特徴づけられる。
  • Gödel文 G は「PAでは証明できないΣ₁文」である。

🔷 4. Gödel Numbering とメタ理論的階層

  • Gödelは命題・証明・証明手続きを自然数で符号化(Gödel Numbering)した。
  • 「φはPAで証明可能」という主張自体も数式化され、 Prov_PA(⌜φ⌝) という形で表現できる。

このメタレベルの主張は、内部言語での再帰的定義によって、自己言及構造を作り出し、 不完全性定理につながります。

🔷 5. Löbの定理と証明可能性の条件付き構造

Löbの定理:

PA ⊢ Prov(⌜φ⌝) → φ ⟹ PA ⊢ φ

つまり、「φが証明可能ならφが成り立つ」が証明できたら、もうφ自体が証明されてしまう

これは「証明可能性」のメタ論理的な制約を表します。

🔷 6. 論理体系の拡張と階層性(PA vs ZFC vs ACA₀, etc)

体系の強さに応じて、証明できる命題の範囲が広がります:

論理体系証明可能性の階層位置証明できる主張
PAΣ₁の証明可能性基本的な数論
ACA₀Σ₁, Π₁の解析的命題実数列の存在など
ZFC高階の集合論命題カーディナル、選択公理など
ZFC + L更に高階の階層へ内的整列可能性など

🔷 7. 証明可能性階層と強さの対応(Reverse Mathematicsとの関連)

Reverse Mathematicsでは、命題から逆に「どの公理が必要か?」を問う。 その過程で、命題が属する階層(WKL₀, ACA₀, ATR₀, Π¹₁-CA₀など)で整理される。

🔷 補足:Turing Jumpと証明可能性のつながり

  • Turing Jumpは、**証明不能性の「飛び級」**を形式化する。
  • PAが証明できるのは0′以下の問題(Σ₁命題)。
  • 0″に属する命題(例:停止性問題の停止性)はPAでは絶対に扱えない。

✴ まとめ:階層的な構図

  Turing Degrees:       0 < 0′ < 0″ < ...
  Arithmetical Hierarchy: Σ₀ < Σ₁ < Σ₂ < ...
  Logical Systems:       Q < PA < ACA₀ < ZFC < ...
  Provability:           decidable < provable < true < unknowable

このように、「何が証明できるか」は、

  • 命題の構造(量化)
  • 体系の強さ(公理)
  • 問題の計算難易度(Turing Degree)

という三層の階層構造に従って分かれています。