事業の損害賠償リスクに関する検討

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事業の損害賠償リスクに関する検討

ケーススタディ(サイバーフィジカルリスク管理)

アパレル 本社日本、販売拠点中国、生産工場ベトナム

① 製品責任(PL)に伴う損害賠償

  • 人体への健康被害・事故等
    • 特にインナーウェアは肌に直接触れるため、素材や染料が原因で皮膚炎、アレルギー、化学物質過敏症が発生した場合の賠償リスク。
    • ODM事業の場合、納品先ブランドが販売する製品で問題が生じた際に、製造元としての責任が追及されるケースもあるため、契約書で責任範囲を明確化する必要あり。

② 品質不良・納期遅延による逸失利益の賠償

  • 製品不良、検品ミス、サイズ規格外品の納品により、販売店やOEM先が販売機会を逸した場合の逸失利益請求リスク。
  • ベトナム縫製工場からの輸送遅延やトラブルで納期が遅れ、販売シーズンを逃した場合の逸失利益。

③ 法令遵守違反による損害賠償

  • ベトナムや中国など現地工場での労務問題(賃金未払い、長時間労働、労働災害など)による訴訟リスク。
  • 現地の環境規制・排水規制違反に伴う行政処分・操業停止・損害賠償請求。

④ 知的財産権侵害による損害賠償

  • デザイン模倣(意図的・非意図的を問わず)、特許侵害、商標侵害で第三者から訴訟を起こされるリスク。
  • ODM事業の場合、顧客提供デザインが他社知財を侵害していた場合、製造元も訴訟対象となるリスクあり。

⑤ 海外子会社に伴うコンプライアンスリスク

  • 上海子会社の税務・会計処理ミスによる罰金や追徴課税の発生リスク。
  • 現地の贈収賄防止法令違反(中国では腐敗防止対策が厳格)による訴訟・罰金リスク。
  • 現地の人権問題等の発生リスクマネジメント

⑥ 自然災害・サプライチェーン途絶による損害賠償

  • ベトナム工場や上海拠点の水害、火災、感染症(COVID-19のようなパンデミック)、政治的不安定によるサプライチェーン停止時の納品義務違反に伴う損害賠償リスク。

損害賠償リスク対策として検討すべきこと

  • **生産物賠償責任保険(PL保険)**の加入範囲確認・拡充
  • ODM契約における責任範囲の明確化・免責条項の整備
  • 品質保証体制、製造工程の品質管理、検品体制の強化
  • 海外拠点(特に上海・ベトナム)での法令遵守を目的とした定期的な監査実施
  • 知的財産権調査およびデザイン管理体制の強化
  • BCP策定による自然災害やパンデミックへの迅速な対応力の確保

サイバー保険を加える場合、具体的に検討すべきポイントは以下の通りです。

サイバー保険の検討ポイント(アパレル事業の場合)

⑦ サイバー攻撃・情報漏洩に伴う損害賠償リスク

  • 顧客情報の漏洩
    • ECサイトや会員管理システムへの不正アクセスにより顧客の個人情報(氏名、住所、連絡先、クレジットカード情報、購入履歴)が流出した場合の損害賠償。
    • 流出が起きた際の通知費用、謝罪対応費用、信用回復措置(クレジット監視サービス提供など)も含む。
  • 知的財産・機密情報の漏洩
    • ODMで顧客ブランドの新製品デザインや生産計画の情報が漏洩した場合、賠償責任が問われるリスク。
    • レースや刺繍キットの製法・技術情報が漏洩した場合、技術流出による競争力低下や第三者からの損害賠償請求リスク。
  • システム停止による事業中断
    • ランサムウェア攻撃による基幹システム停止に伴う操業停止、受注・出荷遅延による取引先への損害賠償リスク。
    • ベトナム工場や上海子会社がシステム停止で生産・物流が滞る場合、契約違反としての賠償請求が発生する可能性。
  • 海外拠点におけるサイバーリスクの増加
    • 特に中国・ベトナムはサイバー攻撃リスクが比較的高く、子会社や工場のネットワーク・情報管理体制が脆弱な場合、被害が拡大しやすい。

サイバー保険加入における重要な確認事項

  • 保険対象に含まれる情報漏洩の範囲(顧客情報、知財情報、機密情報など)
  • 海外子会社・工場のサイバーインシデントも補償されるか
  • インシデント対応費用(調査費用・通知費用・復旧費用)がカバーされるか
  • 操業停止による逸失利益の補償範囲と上限額
  • 身代金支払い(ランサムウェア対応)を含めるかどうかの検討

リスク対策としての推奨対応策

  • サイバーセキュリティ管理体制の強化(ECサイト・海外工場含む)
  • サイバーインシデント発生時の迅速な対応体制構築
  • 定期的なサイバーリスク評価・監査の実施(特に海外拠点)
  • サイバーセキュリティ教育による従業員意識向上(特にメール経由の攻撃対策)
  • 信頼性の高いサイバー保険加入と補償内容の定期的見直し

⑧ 貿易・輸送におけるリスク(物流リスク)

主なリスクの内容:

  • 海上輸送中の貨物の事故(沈没、損傷、紛失、盗難)
  • 通関トラブルによる納期遅延(ベトナム工場→日本、中国→日本)
  • 港湾ストライキや労働争議に起因する納期遅延
  • 国際情勢変化(戦争、紛争、関税引き上げ、経済制裁)に伴う輸送停止やコスト増
  • 貨物取扱いの不備による製品破損や品質劣化(温度管理、湿度管理)

検討すべき保険や対策:

  • 貨物海上保険(Marine Cargo Insurance)
  • 国際貨物運送保険(輸出入貨物保険)の拡充
  • 貿易条件(インコタームズ)の適切な設定・再確認
  • 信頼できる輸送業者(フォワーダー)との取引
  • 輸送状況・貨物追跡システムの導入

⑨ 建物の火災・浸水・地震等の自然災害リスク(事業中断リスク)

主なリスクの内容:

  • 京都本社、上海子会社、ベトナム工場での火災・爆発事故
  • 台風や洪水による工場施設の浸水、設備損傷、生産停止
  • 地震、津波等により施設・設備が破壊され操業が長期停止
  • 災害発生による生産設備、在庫品の破損・喪失による財務的損失と取引先への納品義務違反リスク

検討すべき保険や対策:

  • 火災保険(工場・事務所・倉庫等)の加入と内容の充実
  • 地震保険・風水害特約の加入検討
  • 事業中断保険(Business Interruption Insurance)に加入し、生産停止期間の逸失利益補償
  • 海外施設(上海・ベトナム)の火災・災害保険の充実度チェックと、現地特有のリスクへのカバー範囲確認
  • BCP(事業継続計画)の策定・定期的な見直し
  • 災害時対応マニュアルの作成と従業員教育訓練の実施
  • 生産拠点や在庫拠点の分散化によるリスクヘッジの検討

多国籍展開を行うアパレル企業において網羅的に損害賠償・保険でリスクをカバーすべき範囲は以下のようになります。

✅【総まとめ】検討すべきリスク一覧

  1. 製品責任(PL)リスク
  2. 品質不良・納期遅延リスク
  3. 法令遵守違反リスク(労務・環境)
  4. 知的財産権侵害リスク
  5. 海外子会社のコンプライアンスリスク
  6. 自然災害・感染症によるサプライチェーン停止リスク
  7. サイバー攻撃・情報漏洩リスク
  8. 貿易・輸送に伴う貨物事故・遅延リスク
  9. 建物の火災・浸水・地震等の自然災害リスク