Nonlinear Dynamics|非線形動力学
「線形力学」「線形代数」と非線形の違い
- 線形力学・線形代数:
対称性が破れず、重ね合わせが成り立ち、周期的または指数的な規則的な運動のみを示します。 - 非線形力学・非線形代数:
対称性が破れることで「予測困難な挙動」「分岐」「カオス」などが発生します。
つまり、
分野 | 対称性の破れ | 周期性・規則性 | 典型例 |
---|---|---|---|
線形力学・線形代数 | 起きない | 保たれる | 振り子の単純振動 |
非線形力学・非線形代数 | 起きる | 崩れる(不規則化・カオス化) | 天候、生命進化、渦、モノドロミー |
線形システムとは、本質的に「重ね合わせ(Superposition)」が成り立つ構造を持つ系です。この「重ね合わせ」が成り立つためには、システムの対称性が保たれている必要があります。
具体的に言えば、
- 線形代数における固有値問題(例えば、行列の固有ベクトル・固有値)は、周期的または指数関数的な振る舞いを示し、対称性が破れるような予測不能・非周期的な挙動(例えばカオス)は発生しません。
- 線形力学(調和振動子や線形波動方程式)は、一定の周期性を持つか、規則的に減衰または成長するだけの動きしか持ち得ません。
つまり、線形系には以下の特徴があります:
線形システムの特徴 | 内容(意味) |
---|---|
重ね合わせの原理 | 個々の解を足し合わせて新しい解を作れる |
対称性の保存 | 時間や空間の対称性が維持される |
周期的または指数的な解 | 周期運動(正弦波や余弦波など)や指数的な運動(減衰・成長) |
予測可能性 | カオスや不規則なジャンプは発生しない |
一方、「非線形力学」が対称性を破る理由は?
非線形システムでは、初期条件やパラメータの小さな変化で、以下の現象が起きます:
- 対称性の自発的破れ(Symmetry Breaking)
- 分岐(Bifurcation)
- 周期解からの不可逆的シフトやカオスの発生
非線形系の重要な現象の例:
- 分岐 (Bifurcation)
少しの変化で突然系の性質が変わること(安定な周期軌道が消えるなど)。 - 対称性の自発的破れ (Symmetry Breaking)
対称的な状態から非対称な状態へと突然変わる。 - カオス (Chaos)
決定論的だが予測不可能な複雑な運動。 - モノドロミー (Monodromy)
一周後に元に戻らない、位相的に不可逆なシフト。
例えば、「Hamiltonian monodromy」のような現象は非線形系で起こるもので、経路を一周することで「元に戻らない」、つまり周期的対称性が破れた状態になります。
まとめると:
種類 | 特徴 | 対称性の破れ | 周期性の有無 |
---|---|---|---|
線形力学・線形代数 | 重ね合わせが可能 | 起きない(対称性が保たれる) | 周期的または指数的な規則性 |
非線形力学 | 重ね合わせが不可能 | 起きる(対称性が自発的に破れる) | 不可逆的なシフトやカオス |
「線形力学や線形代数とは、対称性が破れない周期的または規則的な現象を記述する学問領域」
「非線形力学や非線形代数とは、対称性が破れることによって、周期性や規則性が『崩れ』、分岐・カオス・不規則な現象が現れることを記述する学問領域」