Ontologyの歴史的成立過程
Ontology(オントロジー)=存在論 は、「存在するとはどういうことか?」「何が、どのように存在するか?」という問いを扱う、哲学の根幹をなす分野です。
🔷 オントロジーの歴史的成立と発展
1. 🏛️ 起源:古代ギリシャ哲学(紀元前5世紀〜)
- パルメニデス: 「存在するものは存在し、存在しないものは存在しない」
→ 存在そのものの思考を始めた最初期の哲学者。 - プラトン(前427–347): 「イデア界」という“永遠不変の存在”の領域を提唱。
→ 感覚世界と、存在の原型(イデア)の分離 - アリストテレス(前384–322): 存在を「カテゴリー(実体・属性・関係など)」に分類。
→ 現代のオントロジー(特にAIやデータモデリング)に影響を与える概念構造を初めて提示。
2. ✝️ 中世ヨーロッパ:スコラ哲学(11〜14世紀)
- トマス・アクィナス らによって、
神学(神の存在)と存在論が密接に結びつけられた。 - この時代、オントロジーは「存在とは神によって与えられたものか?」という神学的問題と一体化して扱われた。
3. 🧠 近代哲学:デカルト、ライプニッツ、カント
- デカルト(1596–1650):「我思う、ゆえに我あり」
→ 主観的存在(思考する自我)の確実性から出発 - ライプニッツ(1646–1716):「モナド(単子)」という最小存在単位を提唱
→ 存在を論理的に構成しようとした最初の体系 - カント(1724–1804): 「存在は概念の内容ではなく、量の問題である」
→ 存在を人間の認識形式と不可分なものとして扱った
4. 🌌 現代哲学:存在論の再構築と分岐
✅ 現象学・実存主義
- ハイデガー(1889–1976): 「存在とは何か、という問いこそが最も根源的」
→ 著書『存在と時間(1927)』にて、「存在の開け」「世界-内-存在」などの革新概念を提示
→ 現代存在論の中心人物
✅ 分析哲学
- クワイン、ラッセル、クリプキ などによって、
論理・言語・集合論と結びついた**形式的存在論(Formal Ontology)**が展開
✅ 情報科学・AI分野への導入(20世紀末〜)
- オントロジー = 対象世界の「概念構造」を形式化したもの
→ AIやセマンティックWebでの活用が進む
→ 例:**上位オントロジー(DOLCE, SUMO)**など
🗺️ 成立場所・思想的中心地
時代 | 地域 | 中心 |
---|---|---|
古代 | ギリシャ(アテナイなど) | プラトン、アリストテレス |
中世 | ヨーロッパ全域(主に修道院・大学) | トマス・アクィナス(パリ大学など) |
近代 | 西欧(フランス・ドイツ) | デカルト(パリ)、カント(ケーニヒスベルク) |
現代 | ドイツ(ハイデルベルクなど)、英米の大学 | ハイデガー、分析哲学系学派、AI研究機関 |
🧩 現代への応用
分野 | オントロジーの応用例 |
---|---|
AI・知識表現 | セマンティックWeb、知識グラフ |
哲学 | 存在論的実在論、構造主義、形而上学 |
科学論 | 「何が実在か」を定義するための枠組み |
トポロジー・数学 | 層、構造空間、時空モデルの前提になる存在の定義 |
✅ 結論
**Ontology(オントロジー)とは、人間・宇宙・情報・時間を問うすべての理論の「根底」**にある、
「存在そのものの意味と構造」を探求する知の源泉です。