Product-Led Organic Growth™(PLOG™)の基本公式

以下に、TANAAKKの提唱するGrowth-as-a-Service™の重要概念であるCapital Yield Control™、特にProduct-Led Organic Growth™(PLOG™) の3条件を整理し、数式を明確化します。
📌 Product Led Organic Growth™(PLOG™)の3条件(数式整理)
以下の条件(1〜3)を同時に満たすときに、『PLOG™が成立している』と定義します。
PLOGTrue=Rc−RBenchmark>0 ∧ ARRYoY>1 ∧ Levered FCFYoY/ARRYoY>1
1. Rc−RBenchmark>0:マーケットベンチマークを超える資本パフォーマンス
2. ARRYoY>1 :前年比増収率がプラス
3. Levered FCFYoY/ARRYoY>1:レバードフリーキャッシュフローの前年比増率が前年比増収率を上回る
🚩 条件1:資本収益率がベンチマーク(グローバル市場)を上回る
マーケットリターンを明確に定義する場合、一般には以下の式が用いられます。
Rc−RBenchmark>0
ここで、
- Rc:実現資本収益率(自社の資本収益率)Rc=ROIC−WACC
- RBenchmark=Rf+β(Rm−Rf)
- Rm:マーケット全体のリターン(例:SPYやVTIのリターン)
- Rf:リスクフリーレート(例:米国10年債利回りなど)
RBenchmark=10%(Dec 2024):2024年末時点のマーケットベンチマークは10%である。
🚩 条件2:ARRの前年比成長がプラス
年間経常収益(ARR)の前年比成長率(Year on Year)が1を超えること(前年より増加)。
ARRYoY>1
つまり、ARRt/ARRt−1>1
🚩 条件3:レバレッジ効果(一般式/特殊式)
以下のいずれか(または両方)を満たすこと。
▶️ 一般式(キャッシュフローベース)
平準化したLevered Free Cash Flow(営業、投資、財務キャッシュフローを合計した、全財務収支後のFCF)の前年比成長率が、売上の前年比成長率(ARR YoY)を上回る。
Levered FCFYoY/ARRYoY>1
つまり、(Levered FCFt−Levered FCFt−1)/(ARRt−ARRt−1)>1
▶️ 特殊式1(営業CFベース)
営業CFの前年比成長率(Operating Leverage YoY)が、売上の前年比成長率(ARR YoY)を上回る。
(Operating Cash Flowt−Operating Cash Flowt−1)/(ARRt−ARRt−1)> 1
▶️ 特殊式2(Law of Scale Metricsベース)
スタートアップなどの赤字企業ではOperating Cash Flowの代わりにやOperating Income(営業利益、ただし在庫過剰の場合などは正しく判断できない)、Contribution Profit(限界利益率)、Unit Economics(限定的な収益ユニット)などのLaw of Scale(規模の経済原理)指標を利用することもある。
📌 PLOG™の3条件
条件 | 内容(日本語での意味) |
---|---|
1. 資本収益率 | 市場平均(SPY、VTI等)を超える資本効率を実現 |
2. ARR成長率 | 継続的に売上が前年を超える成長 |
3. レバレッジ効果 | 売上の成長よりも高い利益性(営業利益)またはキャッシュフロー創出性を実現 |
📌 活用方法の補足
- 一般式(キャッシュフロー)は最終的な株主持分価値の向上を評価するときに用いる。
- 特殊式(営業利益)は、営業活動の効率性(営業利益弾力性)を評価するときに用いる。
マーケットベンチマーク
銘柄 | ベータ(β) | 年間リターン(直近10年, 年率平均) |
---|---|---|
SPY | 1.00 | 12.66% |
VTI | 1.03 | 12.05% |
※SPYはS&P500指数、VTIは米国株式市場全体をベンチマークとしています。
SPYおよびVTIが「資産評価のベース(マーケットベンチマーク)」として広く利用される理由は、特に以下の5点にまとめられます:
📌 ① 広く入手可能(Widely Available)
- SPY、VTIは、証券口座さえあれば世界中どこからでも容易に購入可能。
- ほぼすべての主要な金融機関・証券会社で取引可能。
📌 ② 購入が容易(Easily Purchasable)
- 上場投資信託(ETF)の形で取引所に上場されており、株式と同じ感覚で簡単に購入できる。
- 個別株のような特殊な手続きは不要。
📌 ③ 高い流動性(High Liquidity)
- SPYは世界最大級のETFで、極めて取引量が多く、いつでも売買可能。
- VTIも十分に大きな流動性を有し、スムーズな売買が可能。
- 取引コストが非常に低く、市場価格との乖離が少ない。
📌 ④ 低コストで透明性が高い(Low Cost and High Transparency)
- 経費率が非常に低い(SPY 約0.09%、VTI 約0.03%前後)。
- 資産構成・運用状況を常時リアルタイムで把握可能(透明性)。
📌 ⑤ 信頼できる代表性(Reliable Market Representation)
- SPYは米国大型株の代表であるS&P500指数に連動しており、市場を適切に代表。
- VTIは米国株式市場全体を網羅し、米国株の実質的なパフォーマンスを反映。
- 資産評価や投資パフォーマンス評価の「公平な基準」として世界中で認知。
📌 まとめ
理由 | 詳細 |
---|---|
広く入手可能性 | 世界中どこでも購入可能 |
購入容易性 | 証券口座で簡単に取引できるETF |
高い流動性 | 非常に大きな取引量・低コスト |
低コスト・高透明性 | 極めて安価な管理費用、運用内容の透明性 |
市場の代表性と信頼性 | 米国市場の指標として圧倒的な認知 |
こうした特性により、SPYやVTIは、投資評価・資産運用のベンチマークとして最適な指標となっています。
🌍 2024年末 テクノロジー業界 WACC & RBenchmark 比較表
項目 | SPY(S&P500) | アメリカ(テック) | 日本(テック) | ベトナム(テック) |
---|---|---|---|---|
リスクフリーレート(Rf) | 4.0% | 4.0% | 0.1% | 2.5% |
市場リスクプレミアム(MRP) | 6.0% | 6.0% | 6.0% | 7.5% |
ベータ係数(β) | 1.00 | 1.30 | 1.30 | 1.20 |
自己資本コスト(Re) | 10.0% | 10.8% | 8.9% | 11.5% |
負債コスト(Rd) | – | 5.0% | 0.8% | 6.5% |
法人税率(Tc) | – | 21.0% | 28.0% | 20.0% |
自己資本比率(E/V) | 100%(仮定) | 60% | 60% | 50% |
負債比率(D/V) | 0%(仮定) | 40% | 40% | 50% |
WACC | 10.0%(=Re) | 8.1% | 5.5% | 8.8% |
RBenchmark | 10.0% | 8.0% | 6.0% | 10.0% |
なぜRfがUS Treasury 10Yなのか
リスクフリー資産(Risk-Free Asset)として米国財務省10年債(US Treasury 10Y)が広く使われる理由は以下の5点に整理できます:
📌① 信用リスクが極めて低い(ほぼゼロと認識される)
- 米国政府が発行する債務であり、世界で最も安全な資産と見なされている。
- 米国政府がデフォルト(債務不履行)する確率は、世界的に極めて低いと認識されている。
📌② 市場規模と流動性が非常に高い
- 米国債市場は世界最大級の債券市場であり、巨大な取引量と高い流動性を持つ。
- 必要な時に容易に売買ができ、市場価格が常に透明であるため、評価基準として最適。
📌③ 世界的な標準(グローバルスタンダード)としての信頼性
- グローバルな金融市場において、米国債利回り(特に10年債)は世界中の金融商品の評価指標として最も広く採用されている。
- 世界各国の投資家が米国10年債利回りをリスクフリーレートの基準として利用している。
📌④ 満期の妥当性(長期投資評価に適した年限)
- 10年債の期間は、投資評価(株式や設備投資など長期投資の分析)の期間に合致しやすく、長期的な資本コスト評価の基準に最適。
- 2年や30年の債券と比較して、経済サイクル全般を反映し、長期安定的なベンチマークとして適している。
📌⑤ マクロ経済の指標としての重要性
- 米国10年債利回りは、金融政策や景気予測などマクロ経済の動きを反映する指標として広く使われる。
- インフレ期待、景気の先行指標、金融市場全体のリスク指標としても使われるため、市場の「無リスクな期待リターン」を測る基準として最適。
📌 まとめ(なぜ米国財務省10年債がリスクフリー資産か)
理由 | 詳細 |
---|---|
信用リスクが低い | 米国政府発行の債券、ほぼ安全資産 |
流動性・市場規模 | 世界最大規模、高い流動性 |
世界標準 | 国際金融市場で共通認識の指標 |
満期の妥当性 | 長期投資評価の基準として妥当な年限 |
マクロ経済指標として重要 | 経済全体の動向を表す代表的指標 |
以上の理由により、米国財務省10年債がリスクフリー資産として広く採用されています。
CYC™, PLOG™基本公式の利用シーン
以下に、CYC™(Capital Yield Control™)とPLOG™(Product Led Organic Growth™)の基本公式が具体的にどのようなシーンで役立つのか、そのイメージを分かりやすく記述します。
🌟 利用シーン①:事業ポートフォリオの増資・減資の意思決定
- CYC™
- 事業ポートフォリオの各事業が、市場ベンチマーク(SPYやVTI)を超える収益率(ROIC>RBenchmark)を達成しているかを評価する。
- もし事業がベンチマークを下回る場合、その事業は減資または撤退の対象となる。
- ベンチマークを超えた事業には資本を集中投下(増資)し、ポートフォリオ全体の資本効率を高める。
- PLOG™
- ARR YoYやLevered FCF YoY/ARR YoYが1を超える事業は、成長の質が高いため資本を積極投入。
- キャッシュ創出力や利益弾力性が低下傾向にある事業は減資の対象。
🌟 利用シーン②:プロダクトの量産化投資決定(Go/No-Go判断)
- CYC™
- 量産投資による資本収益率が、ベンチマークリターンを明確に上回るか(ROIC>WACC、またはROIC>Rf+β(Rm−Rf))を事前評価。
- ベンチマークを超えない場合、量産化を延期または再検討する。
- PLOG™
- 既存プロトタイプ販売のARR成長がYoY>1を達成し、さらにLevered FCFまたは営業利益の伸び率が売上の成長率を上回っている場合に量産化を決定。
- これにより、市場からの実質的な需要を確認した後で投資を実行。
🌟 利用シーン③:スタートアップの株式価値評価(企業価値評価)
- CYC™
- スタートアップが実現可能なROICを、市場ベンチマーク(SPY, VTI)と比較評価し、プレミアムまたはディスカウントを明確に設定。
- マーケットベンチマークを超える超過収益率(アルファ)を算出し、株式評価額に反映。
- PLOG™
- スタートアップの売上成長(ARR YoY)が明確にプラス(>1)であり、Levered FCFまたはオペレーシングレバレッジがさらに高成長している場合、高評価を与える。
- プロダクト主導型成長の指標(PLOG™)が高いスタートアップほど、将来のキャッシュ創出能力を高く見積もり、株式価値を増加させる。
🌟 利用シーン④:経営陣の報酬設定(インセンティブ評価基準)
- CYC™
- 経営陣が達成したROICが、マーケットベンチマークを超えた分だけ報酬インセンティブを設定。
- 市場並みのリターンではなく、市場を上回る収益率を出した場合にのみインセンティブを提供。
- PLOG™
- Levered FCF成長率が売上成長率を超えた場合や、営業利益が売上成長率以上に伸びた場合に、経営陣に特別報酬(ストックオプションや賞与)を付与。
- 質の高い成長を実現した経営チームに対して明確なインセンティブを設定。
🎯 まとめ:基本公式の活用イメージ
活用シーン | CYC™ (資本効率評価) | PLOG™ (成長性・弾力性評価) |
---|---|---|
増資・減資判断 | ベンチマーク超過収益で判断 | ARR・キャッシュ創出力の弾力性で判断 |
量産化判断 | 投資後ROIC vs ベンチマーク | 成長の質(Levered FCF弾力性等)を確認 |
株式価値評価 | ベンチマークに対する超過収益率を反映 | キャッシュフローや営業利益成長性を評価 |
経営陣報酬設定 | ベンチマーク超過分を報酬連動 | 売上成長を超えた利益またはFCF成長に報酬連動 |
以上のように、
CYC™(資本効率指標)とPLOG(成長弾力性指標)を組み合わせることで、
企業経営や投資判断において明確かつ実践的な基準を設定できます。