量子の「ゼロ・ノルム状態(Zero Norm State)」または「ヌル状態(Null State)」

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量子の「ゼロ・ノルム状態(Zero Norm State)」または「ヌル状態(Null State)」

① ゼロ・ノルム状態(ヌル状態)に該当する粒子の既存名称:

ゼロ・ノルム(ヌル)状態とは、ベクトルのノルム(内積による長さ)が0となる状態を指します。この性質をもつ典型的な粒子としては、

  • フォトン(Photon, 光子)
  • グルーオン(Gluon)
  • グラビトン(Graviton, 重力子)(仮想的粒子)

などの「質量ゼロで光速で移動する粒子」が標準的に挙げられます。

これらは一般的に:

  • 「ヌル粒子(Null Particle)」
  • 「ゼロ質量粒子(Massless Particle)」

と呼ばれています。
特に理論物理学の文献で「ヌル粒子」(Null Particle)という用語は、フォトンやグラビトンのような質量ゼロ粒子を明示的に指します。

あなたが今考えている「ゼロ・ノルム状態」について、もう少し丁寧に整理します。


① 「ゼロ・ノルム状態」とはそもそも何か?

「ゼロ・ノルム状態(Zero Norm State)」または「ヌル状態(Null State)」という用語は、通常、量子場理論や弦理論の枠組みで使われます。

  • **ノルム(Norm)**とは、量子状態ベクトルの「長さ」のことです。
    具体的には、量子状態∣ψ⟩|\psi\rangleのノルムは⟨ψ∣ψ⟩psiで定義されます。
  • **ゼロ・ノルム状態(ヌル状態)**は、このノルムがゼロになる状態:

⟨ψ∣ψ⟩=0

を指します。

これは、通常の量子力学では直感に反し、奇妙な状態に見えますが、量子場理論や弦理論では頻繁に登場します。

② 「ゼロ・ノルム状態」と「重ね合わせ状態 1, 0, -1」の関係

あなたが言及しているような「重ね合わせ状態で 1, 0, -1 があり、その中の0の状態」という表現は、特に粒子のスピン状態の表現に類似しています。

たとえば光子(フォトン)など、スピン1粒子の偏光状態を表すとき、次の3つの基本状態があります:

状態表現物理的意味
+1|1⟩右円偏光
0|0⟩縦偏光
-1−|1⟩左円偏光

このように、粒子のスピン状態は「+1, 0, -1」の重ね合わせ状態で表現されます。

ただし、これらは一般的な「スピン状態」であって、通常これらのスピン状態は「ゼロ・ノルム状態」とは別概念です。

  • スピン状態の0というのは、単にスピンが縦方向に偏光した状態であって、ノルム(ベクトルの長さ)がゼロとは限りません。むしろノルムは通常1に規格化されています。

③ 本来の意味での「ゼロ・ノルム状態」の具体例

弦理論や量子場理論で言う「ゼロ・ノルム状態(ヌル状態)」は少し異なり、例えば以下の状況で登場します:

  • 弦理論のBRST量子化
    BRST形式(共変的量子化)では、物理的に許される状態を選ぶ際にゼロ・ノルム状態(ヌル状態)が頻繁に現れます。これらの状態は物理的な観測に直接現れず、理論の整合性を保つために必要です。
  • ゲージ理論(光子やグルーオンなどのゲージ粒子)
    これらの粒子を記述する量子場理論では、非物理的な「ゲージ自由度」(例えば余剰な自由度)が「ヌル状態(ゼロ・ノルム状態)」となります。これらの状態は物理的に観測できず、理論の数学的整合性を保つためだけに現れます。

つまり、ゼロ・ノルム状態は通常、「物理的には観測不可能な余分な自由度」として存在しています。

④ 「ゼロ質量粒子(フォトン)」と「ゼロ・ノルム状態」は同じものか?

  • 厳密には違います。
  • フォトンは質量がゼロですが、その「物理的に観測可能な状態」はゼロ・ノルムではありません(観測できる状態のノルムは1)。
  • ただしフォトンをゲージ理論として量子化すると、ゲージ固定前にはゼロ・ノルム(ヌル)状態が登場します。これはフォトンの非物理的な余分な自由度に相当します。

つまり、フォトン(質量ゼロ粒子)とゼロ・ノルム状態は厳密に同一ではなく、「フォトン理論の中に非物理的なゼロ・ノルム状態が存在する」という表現が正確です。

⑤ 「虚数質量(タキオン)」とゼロ・ノルム状態の違い

  • 虚数質量粒子(タキオン)は質量が虚数という意味で、ノルムがゼロという意味ではありません。
  • ノルムが虚数になることは量子理論上、通常許されません。ノルムがゼロになることは可能ですが、虚数にはなりません(虚数ノルムは非物理的すぎるため、理論から除外されます)。

タキオンとゼロ・ノルム状態は異なる概念であり、直接関連付けることは適切ではありません。

✅ 最終的な整理

  • 「重ね合わせ状態で 1, 0, -1 のうち0の状態」というのは、スピン(偏光)状態の0を指しています。
  • これは通常のスピンの偏光状態であり、ゼロ・ノルム状態とは別の概念です。

ゼロ・ノルム状態とは:

  • 量子状態ベクトルの内積(ノルム)がゼロになる、非物理的な状態のことです。
  • 主に弦理論やゲージ理論(フォトンの非物理的状態)で登場します。

つまり、あなたがイメージしている「0の状態」(スピン0状態)は、ゼロ・ノルム状態(ヌル状態)とは厳密には異なります。

ゼロ・ノルム状態を指す標準的な呼称は:

  • 「ヌル状態(Null state)」または「ゼロ・ノルム状態(Zero norm state)」

と呼ばれ、1,0,-1のスピン偏光状態とは直接関連付けられません。


📌【1】各偏光の定義

偏光定義(電場の振動方向)回転方向(進行方向に対して)スピン状態
右円偏光(うえんへんこうRight Circular Polarization)電場が進行方向に垂直な面内で円形に回転する状態時計回り(右回り)+1
縦偏光(じゅうへんこうLongitudinal Polarization)電場が進行方向に平行(前後)に振動する状態回転なし(前後に直線的振動)0
左円偏光(さえんへんこうLeft Circular Polarization)電場が進行方向に垂直な面内で円形に回転する状態反時計回り(左回り)-1

📌【2】各偏光の直感的イメージ

  • 右円偏光
    光が観察者に向かって来るとき、電場ベクトルが「時計の針」のように右回りに円を描いています。
  • 左円偏光
    同じ状況で、電場ベクトルが逆に左回りに円を描いています。
  • 縦偏光
    円を描かず、光の進行方向(前後方向)に電場が伸縮するように振動しています。
    ※ただし自由空間の光では物理的に観測されません。

📌【3】量子力学的表現(スピン1粒子の場合)

スピン1粒子(例えば光子など)は3つの状態を取ります:

  • 右円偏光:∣+1⟩
  • 縦偏光:∣0⟩
  • 左円偏光:∣−1⟩

量子力学ではこれらを明確に区別して表現します: ∣+1⟩,∣0⟩,∣−1⟩

📌【4】数学的な定義(ベクトル表記)

光の進行方向を zz軸とする場合、それぞれの状態は次のように表現されます:

  • 右円偏光(∣+1⟩)
\[|+1\rangle = \frac{1}{\sqrt{2}}\begin{pmatrix} 1 \\ i \\ 0 \end{pmatrix}\]
  • 縦偏光(∣0⟩)
\[|0\rangle = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}\]
  • 左円偏光(∣−1⟩)
\[|-1\rangle = \frac{1}{\sqrt{2}}\begin{pmatrix} 1 \\ -i \\ 0 \end{pmatrix}\]

ここでのベクトル表記は、
上から順に x方向, y方向, z方向 の電場成分を表しています。

📌【5】物理的な違い(観測可能性)

偏光自由空間で観測可能か用途や特徴
右円偏光○ 観測可能偏光サングラス、3D映画、光通信
縦偏光× 観測不可(ゲージ理論で禁止)仮想粒子やプラズマ中の特殊な波としてのみ現れる
左円偏光○ 観測可能偏光サングラス、3D映画、光通信

縦偏光は理論的に存在しますが、自由空間ではゲージ理論的な理由で禁止され、通常の自由な光としては存在しません。

📌【6】各偏光の物理的性質(スピンと角運動量)

偏光角運動量(スピン)量子力学的記号
右円偏光σ⁺(シグマプラス)
縦偏光0σ⁰(シグマゼロ)
左円偏光σ⁻(シグママイナス)

光子のスピンが右円偏光では +ħ、左円偏光では -ħ、縦偏光では 0 となります。

📌【7】まとめ(端的な整理)

偏光の種類電場の振動方向回転方向(進行方向に対して)スピン
右円偏光進行方向に垂直な面内を回転時計回り(右回り)+1
縦偏光進行方向に沿った振動回転なし(直線的振動)0
左円偏光進行方向に垂直な面内を回転反時計回り(左回り)-1
  • 右円偏光と左円偏光は物理的に観測される状態であり、電場が進行方向に垂直な平面内を回転する偏光 です。
  • 縦偏光は理論的には存在しますが、自由空間では物理的に禁止されている特殊な偏光状態 です。

これらの違いが、右円偏光・縦偏光・左円偏光の定義と物理的特徴を明確に区別しています。