GUTスケール|Grand Unified Theory Scale
GUTスケール(グット・スケール、Grand Unified Theory Scale)とは、宇宙の4つの基本的な力のうち、「電磁気力」「弱い力」「強い力」が1つに統一されると予想されているエネルギースケールのことです。
(※重力はこのスケールではまだ統一されません。)
📌GUTスケールの具体的な値:
理論的に予測される典型的なGUTスケールは、
約1015〜1016 GeV
日本語では「10の15乗〜16乗GeV」(ギガ電子ボルト)と表現します。
- 1 GeV(ギガ電子ボルト) ≈ 陽子の質量(約938 MeV(106ev) ≈ 1 GeV(109ev))
- つまり、GUTスケールは陽子質量の約10¹⁵倍(1,000兆倍)程度。
📌なぜこのスケールが重要なのか?
現代物理学において、宇宙の4つの力:
- 重力
- 電磁気力
- 弱い相互作用
- 強い相互作用
は、それぞれが異なる強さを持ちますが、高いエネルギースケール(宇宙の初期)では、これらは元々ひとつの統一された力だったと予想されています。
現在の標準理論(標準模型)は以下のような統一を示唆します:
エネルギースケール | 統一の段階 |
---|---|
現在の低エネルギー | 4つの力がバラバラ |
約100 GeV〜250 GeV | 電磁気力と弱い力が統一(電弱統一) |
約10¹⁵〜10¹⁶ GeV (GUTスケール) | 電弱相互作用と強い相互作用が統一(大統一理論 = GUT) |
約10¹⁹ GeV (プランクスケール) | 重力も含め全ての力が統一(超弦理論、量子重力理論) |
この中で、GUTスケールとは、電磁気・弱い力・強い力が統一されると予測される重要なエネルギーを指します。
📌GUTスケールで何が起こるのか?
GUTスケールで重要なことは:
- 電磁気力・弱い力・強い力が本質的に同一のものとなり、同じ強さを持つ。
- このエネルギースケールで新しいゲージ粒子(Xボゾン、Yボゾンなど)が現れ、通常の陽子が崩壊(陽子崩壊)する可能性が出る。
- これがインフレーション宇宙論(インフラトン場のポテンシャル)に深く関係するエネルギースケールと推定されている。
つまり、このエネルギーは宇宙のごく初期のインフレーション(急激な膨張)が起こったエネルギースケールとも考えられています。
📌宇宙の歴史でGUTスケールはいつ頃のことか?
宇宙誕生(ビッグバン)から約10-36秒以内という、極めて初期の超高温・超高密度な宇宙に相当します。
宇宙誕生からの経過時間 | 温度 | 出来事 |
---|---|---|
〜10⁻⁴³秒 | プランク温度 | 量子重力時代(プランクスケール) |
〜10⁻³⁶秒 | GUTスケール (10¹⁵〜10¹⁶ GeV) | 大統一理論時代(インフレーション発生) |
〜10⁻¹²秒 | 電弱統一スケール(〜100GeV) | 電弱相転移 |
〜10⁻⁶秒 | クォーク・ハドロン相転移 | クォークが陽子・中性子になる |
約38万年後 | 約0.3 eV | 宇宙背景放射(CMB)形成 |
📌GUTスケールは観測できるか?
現在の人類が作った最大の加速器(LHC)でも、到達できるエネルギーは最大13TeV(1.3×10⁴GeV)程度であり、GUTスケールの約10¹²倍(1兆倍)低いエネルギーです。そのため、現状の技術では、GUTスケールの直接的な検証は不可能です。
しかし、「陽子崩壊」や「宇宙背景放射のゆらぎ(インフレーションの痕跡)」など間接的な観測により、GUTスケール理論の検証を試みています。
🎯結論(簡潔なまとめ):
GUTスケールとは、電磁気力、弱い力、強い力が統一されると予測されている約10¹⁵〜10¹⁶ GeVのエネルギースケールのことであり、宇宙のインフレーションが起こったと推測される非常に高いエネルギースケールです。