アト秒パルス光の生成に関する実験手法|Experimental Methods for Generating Attosecond Pulses of Light
定理:アト秒パルス光の生成法(Attosecond Pulse Generation)
歴史的重要性:
アト秒(10⁻¹⁸秒)という極めて短い時間スケールの光パルスの生成技術を確立し、電子の動きをリアルタイムで観測する新しい実験物理学の領域を拓いた。これにより、物質内での超高速な電子ダイナミクスを直接測定可能となり、物理学・化学の基礎的理解が飛躍的に進展した。
発表者(2023年ノーベル物理学賞受賞者):
- ピエール・アゴスティーニ(Pierre Agostini)
- フェレンツ・クラウス(Ferenc Krausz)
- アンヌ・リュイリエ(Anne L’Huillier)
生年月日:
- ピエール・アゴスティーニ:1941年7月23日
- フェレンツ・クラウス:1962年5月17日
- アンヌ・リュイリエ:1958年8月16日
出生地:
- ピエール・アゴスティーニ:フランス・パリ
- フェレンツ・クラウス:ハンガリー・モール
- アンヌ・リュイリエ:フランス・パリ
主な業績(論文):
高次高調波を利用したアト秒光パルスの生成とその観測方法の開発
発表年(代表的な論文):
- アンヌ・リュイリエ:1987年(高次高調波生成法)
- ピエール・アゴスティーニ、フェレンツ・クラウス:2001年(単一アト秒パルスの生成と観測)
発表場所(主な所属研究機関):
- ピエール・アゴスティーニ:オハイオ州立大学(アメリカ)
- フェレンツ・クラウス:マックス・プランク量子光学研究所(ドイツ)
- アンヌ・リュイリエ:ルンド大学(スウェーデン)
受賞:
2023年ノーベル物理学賞(物質中の電子ダイナミクスを観測可能にしたアト秒パルス生成法の開発に対して)
代表的な公式(3ステップモデル):
hν=Ip+Kelectron
公式の説明:
- hν (h\nu):放出される光子のエネルギー
- Ip:原子のイオン化ポテンシャル(電子が原子から脱出するのに必要なエネルギー)
- Kelectron:レーザー電場で加速された電子が再衝突時に持つ運動エネルギー
高強度の超短パルスレーザー光を希ガスに照射すると、原子内の電子がトンネル効果でイオン化され、レーザー電場によって加速されて再び元の原子核付近に戻る。この際、電子が再衝突することで高次高調波と呼ばれる極めてエネルギーの高い光子を放出し、これを利用してアト秒という超高速の光パルスを得る。
親交の深かった科学者(関連研究者):
- ポール・コーカム(Paul Corkum、高次高調波の理論モデルの提唱者)
- アハメド・ズウェイル(Ahmed Zewail、フェムト秒科学のパイオニア)
- ゲルハルト・パウルス(Gerhard Paulus、アト秒物理学研究)
- マルガレット・マーネイン(Margaret Murnane、超高速光学研究)
- ヘンリー・カプテイン(Henry Kapteyn、アト秒光パルス生成研究)
代表的な公式(モデル):3ステップモデル(Corkumモデル)
このモデルは高次高調波発生(HHG; High Harmonic Generation)の基礎となる理論で、ポール・コーカム(Paul Corkum)によって提唱された。
【3ステップモデルの内容】
アト秒パルス光は以下の3段階を経て生成される:
- ステップ1(トンネルイオン化)
Eionization(t)=Elaser(t)>Eatomic
- レーザー電場 Elaser(t)が原子をイオン化できる臨界強度 Eatomicを超えると、電子がトンネル効果でイオン化される。
- ステップ2(電子の加速)
- ステップ3(再衝突・高次高調波発生)
hν=Ip+Kelectron
- 加速された電子が再び元の親イオンに衝突し、その際に電子が持つ運動エネルギー Kelectron と原子のイオン化ポテンシャルIpに相当する高エネルギーの光子(高次高調波、エネルギー hν)を放出する。
【公式の説明(物理的意味)】
- アト秒パルス生成においては、高強度のフェムト秒レーザー光を希ガスに照射し、電子を一度原子から引き離し(トンネルイオン化)、電子が再衝突することで高エネルギーの光を発生させる。
- この衝突により得られた高次高調波光を適切に組み合わせることで、最終的に極めて短いアト秒パルスを得ることができる。
このモデルはアト秒物理学の実験的研究および理論的理解の基礎を築いたことから、2023年ノーベル物理学賞の理論的背景として広く認識されている。