過去の決算書は、社長以上に雄弁に未来を語る

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過去の決算書は、社長以上に雄弁に未来を語る

過去の有価証券報告書にはその会社の未来の全てが記録されている

財務諸表(BS、PL、CF)や有価証券報告書は、数字の羅列にとどまらず、企業の未来の収束値や生命維持のための正常な防衛反射を雄弁に語っている。株主の集合知は、一般に考えられる以上に的確に企業の未来を予見している。有価証券報告書を深く読み解けば、企業が未来に対して取るべきアクションや思想が記述されていることがわかる。

マイクロソフト、アマゾン、Googleは、ネットワーク上における「新しいテナント業」を営むディベロッパーとして、地代やテナント料を請求し続ける仕組みを築いている。アップルは、トレードマークを軸に、サプライチェーンやコモディティが変化したとしても、常にフリーキャッシュフローを創出し続ける未来型企業である。

一方、日本企業の多くは、マンション経営並みの低い利回りしか生まない旧来型テナント業にとどまっている。設備投資(Investing Cash Flow)に見合うか、それ以上のオペレーティングレバレッジを創出していない企業は、未来に対して目に見えない手数料を払っていることになる。ROICが世界最上位の企業に劣る場合には、未来において挽回できる可能性はほぼゼロだ。

真の企業価値は資源吸引力

時計や不動産、美術品などの資産が値上がりするという理由で投資する人は、実際にはインフレと貨幣経済に対する「手数料」をマーケットに支払っているに過ぎない。真の企業価値は、人の注目をどれだけ集められるか、つまりヒト、カネ、モノ、そして時間を集める「資源吸引力」に依存している。

不動産価値の本質も従来のような場所代ではない。そこに集まる「人」の密度であり、所有権そのものに対する価値は既に失われつつある。占有権に対して支払われる対価は、有効需要に裏打ちされた資源吸引力、つまりフリーキャッシュフローの創出能力に他ならない。人類は「求心力」と「エネルギーフロー」にこそ価値を見出し、単なるストックを重要視しないのだ。

ネゲントロピーの創造

このエネルギーの象徴的存在が「スター(Star)」である。スターは重力のように人々を引き寄せ、まるで未来からエネルギーが流れ込んでいるような現象を生む。エントロピーが局所的に減少し、時間の流れが逆転したかのような印象を与える。(ネゲントロピー)

ネゲントロピーを発生している物質や系は、通常、外部環境からエネルギーを取り込み、それを別の形態(例えば熱や光)で放射することで内部の秩序を維持・向上させている。星が典型的な例で、核融合によりエネルギーを放射し続けることで、自身の構造や秩序を長期間維持している。

これに類似して、生物(例えば植物)は太陽光という高位のエネルギーを吸収し、低位の熱エネルギーを放射することでネゲントロピー(秩序)を維持している。人間社会における企業や組織も、資本や情報といった「エネルギー」を取り込み、価値創出の過程で外部に「熱(排出される情報やコストなど)」を放射しつつ内部の秩序を高めている。したがって、ネゲントロピーを生じさせている物質やシステムは、必ず外部環境からエネルギーを取り入れ、それを何らかの形態で放射・排出するという共通構造を持っていると言える。

つまり、「よい会社の財務諸表は星のようにどことなく光っている」ので目立つ。すぐに発見できるということだ。真のアセットライト型組織は、資産を売却するだけで実現できるものではない。日々消費したエネルギーや資本が、必ずそれ以上の価値として返ってくる「時間のレバレッジ」を本能的に追求する人材が集まった組織こそ、真のスター組織である。

セールスやエンジニアはよく「お客さんの判断待ちです」というが、相手企業の反応や感情に左右されて意思決定を遅らせる企業は、自らの無知や非効率性を露呈し、顧客に混じって金を垂れ流し続けているだけだ。マーケットのボトルネックを理由に行動を遅らせる企業は、マイクロソフトやアップル、アルファベットのような企業に敗れる運命にある。顧客の遅延を自社の負債として捉え、感情に左右されず普遍的な資本主義の原理に基づき淡々と意思決定を進める企業こそが、真の競争優位を築ける。

マーケットのボトルネックを自社の問題としてとらえ、問題の複雑性を分類し、解決をエコシステム全体にアロケーションすることで、フリーキャッシュフロー創出を最大化すべきである。

決算書ほど雄弁な経営者はいない

自然言語は曖昧なものではなく、競争的原理に基づく普遍的なプロンプトであり、プログラミング言語を超えた高次の言語体系である。この言語を活用したプロンプトの精度こそが、組織の未来の成功を規定する。

財務諸表は、まさにこうした企業の本質的思想と未来を映し出す鏡であり、過去の決算書は社長の言葉以上に雄弁に未来を語るのである。