量子トンネル効果の確率|人間の体が壁をすり抜ける確率はゼロではない
量子トンネル効果の確率はどの程度なのか?
量子トンネル効果(Quantum Tunneling)は、粒子が本来は越えられないエネルギー障壁をすり抜ける現象ですが、その確率は 粒子の質量、障壁の幅、エネルギー によって大きく変わります。
人間の体が壁をすり抜ける可能性を考えると、その確率は天文学的に低く、事実上ゼロです。
1. 量子トンネル効果の確率を決める要因
量子トンネル確率 Tは、障壁の厚さ L と高さ V に依存し、近似的に以下の式で表されます。
\[T \approx e^{-2 \kappa L}\]ここで、
\[\kappa = \frac{\sqrt{2m(V – E)}}{\hbar}\]- m : トンネルする粒子の質量
- V : 障壁のポテンシャルエネルギー
- E : 粒子の持つエネルギー
- L : 障壁の幅
- ℏ\hbar : プランク定数 (1.054×10-34 Js)
この式からわかる通り、質量 mが大きい、障壁 L が厚い、エネルギー差 V−Eが大きいと、トンネル確率は指数関数的に減少します。
2. 電子 vs. 人間の体
(1) 電子のトンネル効果(実験で観測可能)
電子のような軽い粒子では、トンネル効果が頻繁に観測されます。
- 例: トンネルダイオード
- 電子が半導体の障壁をすり抜けることで電流が流れる。
- 実際の確率: 数%以上
- 例: 核融合(トンネル効果で陽子が結合)
- 太陽の内部では、陽子同士がトンネル効果を介して融合する。
- トンネル確率: 10⁻²⁶(非常に低いが、恒星内では大量の陽子が存在するため融合が起こる)
(2) 人間の体が壁をすり抜ける確率
(仮定)
- 人間の体を**全体で 70 kg(102710^{27}1027 個の原子)**の粒子の集合体とする。
- 壁の厚さ 30 cm(0.3 m)。
- 人間の原子はすべて一度にトンネルしなければならない。
(計算)
個々の粒子(例えば陽子)のトンネル確率を 10−3010^{-30}10−30 だと仮定する(これはすでに現実的ではないほど高いが、仮にこう設定)。
人間全体(1027個の原子)が同時にトンネルする確率は、
10-30*10^27
これは、天文学的どころか、宇宙の寿命よりもはるかに長い時間スケールが必要な確率で、ほぼゼロです。
3. まとめ
物体 | トンネル確率(おおよそ) | 実際に観測可能か? |
---|---|---|
電子(トンネルダイオード) | 10~100% | 観測可能 |
陽子(太陽内の核融合) | 10⁻²⁶ | 観測可能 |
ヘリウム原子(ナノスケールの障壁) | 10⁻¹⁰ 〜 10⁻¹⁵ | ごくまれに発生 |
1個の水素原子が壁をすり抜ける | 10⁻⁴⁰ 〜 10⁻⁶⁰ | 観測不可 |
人間の体が壁をすり抜ける | 10^{-30 × 10^{27}} | 事実上ゼロ |
結論:
✅ 電子や陽子レベルでは、量子トンネル効果は実際に観測される。
✅ しかし、人間のようなマクロな物体が壁をすり抜ける確率は、事実上ゼロであり、宇宙の寿命を超える時間スケールでしか起こらない。
✅ 現実世界では「人間が壁をすり抜ける」ことはゼロではないが宇宙の寿命を何𥝱(じょ)回か生きると1回見れるかもしれないレベル