ET|Einstein Telescope
**Einstein Telescope(ET)**は、次世代の地上型重力波望遠鏡であり、現在計画段階にある欧州のプロジェクトです。ETは、現在稼働中のLIGOやVIRGO、KAGRAといった既存の重力波観測施設よりもはるかに高感度な観測を可能にし、宇宙の理解を飛躍的に深めることが期待されています。
Einstein Telescope の概要
- 目的: 重力波の観測を通じて、ブラックホールの衝突、中性子星合体、超新星爆発などの天体現象を詳細に解析し、一般相対性理論の検証や宇宙の進化の研究に貢献。
- 観測能力: LIGOやVIRGOの約10倍の感度を持ち、100億光年以上離れた天体現象も観測可能。
- 運用開始予定: 2035年ごろを目標。
技術的特徴
1. トライアングル構造
ETは、従来のL字型ではなく、3つの10 kmのアームを持つ正三角形の構造を採用する予定です。これにより、より広範囲な重力波信号の方向性解析が可能となります。
2. 地下施設
- ETは地下200~300メートルに建設予定で、地面の振動ノイズを大幅に低減し、感度を向上させます。
3. 低温ミラー技術
- 鏡を**極低温(10~20K)**まで冷却し、熱雑音を最小限に抑える設計。
4. 幅広い周波数帯域
- 1 Hz から 10 kHz までの広帯域重力波観測が可能で、ブラックホールや中性子星の合体だけでなく、宇宙初期のインフレーション時代の重力波も観測できる可能性がある。
期待される科学的成果
- ブラックホールと中性子星の合体の詳細解析
- 既存の観測よりも高い精度で、合体前後の進化を解明。
- 宇宙論の発展
- ダークエネルギーやダークマターの性質を探る手がかりを提供。
- 一般相対性理論のさらなる検証
- 高精度なデータを用いて、アインシュタインの理論の限界をテスト。
- 初期宇宙の重力波の探索
- インフレーション時代の重力波を観測できれば、ビッグバン直後の物理の解明に貢献。
建設候補地
2025年までに決定予定ですが、現在の候補地は以下の2つ:
- オランダ・ベルギー・ドイツ国境のEuregio Meuse-Rhine地域
- イタリアのサルデーニャ島
ETと他の重力波望遠鏡の比較
観測施設 | アーム長 | 構造 | 低温ミラー | 低周波対応 | 感度 |
---|---|---|---|---|---|
LIGO | 4 km | L字型 | × | × | 現行 |
VIRGO | 3 km | L字型 | × | × | 現行 |
KAGRA | 3 km | L字型 | 〇 | 〇 | LIGO/VIRGOと同等 |
Einstein Telescope | 10 km | 三角形 | 〇 | 〇 | LIGOの10倍 |
まとめ
Einstein Telescope は、次世代の重力波観測を担う最先端のプロジェクトであり、天文学や物理学に革新をもたらす可能性があります。特に、ブラックホール合体の詳細観測や宇宙の進化に関する研究、さらには一般相対性理論の検証といった幅広い分野に影響を与えることが期待されています。