Law of Thermodynamics|熱力学法則

熱力学の法則(Thermodynamic Laws)
熱力学はエネルギーの移動や変換を扱う物理学の分野であり、以下の4つの基本法則があります。
🔹 0番目の法則(熱平衡の法則)
(Zeroth Law of Thermodynamics)
📌 内容
もしAとBが熱平衡にあり、BとCも熱平衡にあるならば、AとCも熱平衡にある。
📌 意味
- 熱平衡とは、2つの物体の温度が同じで、エネルギーのやり取りがない状態。
- この法則により、「温度」という概念が定義される。
- 実際には温度計が成り立つ原理。
📌 発表
- 20世紀初頭に定式化(19世紀には暗黙の了解として使われていた)
- 名称は20世紀になってから(1~3番目の法則が確立した後に命名)
🔹 第1法則(エネルギー保存則)
(First Law of Thermodynamics)
📌 内容
エネルギーは保存され、外部とのエネルギーのやり取りがない限り、システムのエネルギー総量は変化しない。
ΔU=Q−W
📌 意味
- 内部エネルギー Uの変化は、「熱 Q」の供給と「仕事 W」の差で決まる。
- つまり「エネルギーは形を変えるが、消失もしないし、無から生じることもない」。
📌 発表
- 1847年: ヘルマン・フォン・ヘルムホルツ(Hermann von Helmholtz)によって提唱
- ジェームズ・プレスコット・ジュール や ルドルフ・クラウジウス も関与
🔹 第2法則(エントロピー増大の法則)
(Second Law of Thermodynamics)
📌 内容
エネルギーは一方向に変化し、不可逆な過程ではエントロピー(乱雑さ)が増大する。
ΔS≥0
📌 意味
- 自然界の変化は一方通行であり、不可逆である(例えば、温かいコーヒーが自然に冷めるが、勝手に温まることはない)。
- 熱は高温から低温へ自発的に流れる。
- エネルギーの質は劣化する(例:摩擦によって熱になるが、その熱から元の運動エネルギーに戻すのは難しい)。
📌 発表
- 1850年: ルドルフ・クラウジウス(Rudolf Clausius)
- 1854年: ウィリアム・トムソン(Lord Kelvin)
🔹 第3法則(絶対零度到達不可能の法則)
(Third Law of Thermodynamics)
📌 内容
絶対零度(-273.15℃, 0K)において、エントロピーは最小(完全秩序)になる。
S→0(as T→0)
📌 意味
- 物質は絶対零度に近づくにつれて、原子の運動が停止し、エントロピーがゼロに近づく。
- しかし、絶対零度に到達するのは不可能。
- 低温技術(冷凍、超伝導)で重要な法則。
📌 発表
- 1906年: ヴァルター・ネルンスト(Walther Nernst)
🔹 まとめ
法則 | 内容 | 意味 | 提唱者・発表年 |
---|---|---|---|
0番目の法則 | 熱平衡にある物体は同じ温度を持つ | 温度の概念の定義 | 20世紀初頭(暗黙的に19世紀から) |
第1法則 | ΔU=Q−W(エネルギー保存則) | エネルギーは保存されるが形を変える | 1847年(ヘルムホルツ、ジュール) |
第2法則 | エントロピーは減少しない(増大する) | 自然界の変化は不可逆 | 1850年(クラウジウス) |
第3法則 | 絶対零度ではエントロピーはゼロ | 絶対零度には到達不可能 | 1906年(ネルンスト) |
🔹 熱力学の法則の応用
- エンジン・発電機(第1法則、第2法則)
- 冷却システム・エアコン(第2法則、第3法則)
- 化学・材料科学(エントロピー・エネルギーの計算)
- 宇宙物理学(ブラックホールのエントロピー)
熱力学の法則の発表者と発表場所・学会
🔹 0番目の法則(熱平衡の法則)
項目 | 内容 |
---|---|
提唱者 | 19世紀以前から暗黙的に使用(正式な発表者なし) |
学会・発表場所 | 20世紀初頭に熱力学研究の一環として命名 |
背景 | ラルフ・ファウラー(Ralph H. Fowler)が1930年代に「0番目の法則」として命名 |
発表年 | 20世紀初頭 |
出生地 | – |
関連学会 | イギリス王立学会(Royal Society)など |
🔹 第1法則(エネルギー保存則)
項目 | 内容 |
---|---|
提唱者 | ルドルフ・クラウジウス(Rudolf Clausius)、ジェームズ・プレスコット・ジュール(James Prescott Joule)、ヘルマン・フォン・ヘルムホルツ(Hermann von Helmholtz) |
発表年 | 1847年(ヘルムホルツ) |
発表場所・学会 | ベルリン・アカデミー(Prussian Academy of Sciences, Berlin) |
出生地(主要人物) | – クラウジウス(ドイツ、コッシュン) – ジュール(イギリス、サルフォード) – ヘルムホルツ(ドイツ、ポツダム) |
🔹 第2法則(エントロピー増大の法則)
項目 | 内容 |
---|---|
提唱者 | ルドルフ・クラウジウス(Rudolf Clausius)、ウィリアム・トムソン(Lord Kelvin) |
発表年 | 1850年(クラウジウス) |
発表場所・学会 | ベルリン科学アカデミー(Berlin Academy of Sciences) |
出生地(主要人物) | – クラウジウス(ドイツ、コッシュン) – ケルヴィン(イギリス、北アイルランド・ベルファスト) |
🔹 第3法則(絶対零度到達不可能の法則)
項目 | 内容 |
---|---|
提唱者 | ヴァルター・ネルンスト(Walther Nernst) |
発表年 | 1906年 |
発表場所・学会 | ドイツ科学アカデミー(Berlin Academy of Sciences) |
出生地 | ドイツ、ブルク(現ポーランド領) |
🔹 まとめ
法則 | 提唱者 | 生まれ | 発表年 | 発表場所・学会 |
---|---|---|---|---|
0番目の法則 | 不明(ファウラーが命名) | – | 20世紀初頭 | イギリス王立学会 |
第1法則 | ヘルムホルツ、ジュール、クラウジウス | ドイツ・イギリス | 1847年 | ベルリン・アカデミー |
第2法則 | クラウジウス、ケルヴィン | ドイツ・イギリス | 1850年 | ベルリン科学アカデミー |
第3法則 | ネルンスト | ドイツ | 1906年 | ドイツ科学アカデミー |
熱力学の各法則は、ドイツとイギリスで確立され、ベルリン科学アカデミーやイギリス王立学会で発表されたものが多いです。