General Relativity|一般相対性理論

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General Relativity|一般相対性理論

アインシュタインの出生地
ドイツ帝国の ウルム(Ulm) で1879年に生まれました。

特殊相対性理論の発表地
1905年に、スイスの ベルン(Bern) で発表しました。当時、ベルンの特許局に勤務していました。

一般相対性理論の発表地
1915年に、プロイセン(現在のドイツ)の首都 ベルリン(Berlin) で発表しました。当時ベルリン大学(現フンボルト大学)の教授として勤務していました。

アインシュタインの理論は突然生まれたわけではなく、過去の偉大な科学者の研究成果が土台となって生まれました。特にニュートン力学、リーマン幾何学などが重要な背景を形成しています。それらを踏まえ、アインシュタインの研究の流れを整理すると以下のようになります。

1.ニュートン力学からの出発(17世紀~19世紀)

ニュートンが17世紀に確立した古典力学は、重力が物体間の「作用する力」として即時に働くと仮定していました。しかし、19世紀に入り電磁気学の研究が進展し、マクスウェル方程式によって光の速度は常に一定であることが明らかになります。

当時、ニュートン力学では速度が絶対的なもので、光速度も観測者の運動によって変化すると考えられていましたが、マクスウェルの理論とは矛盾します。この矛盾を解決するために生まれたのがアインシュタインの特殊相対性理論です。

2.特殊相対性理論(1905年)

アインシュタインは1905年に特殊相対性理論を発表しました。この理論は以下の2つを基本的な仮定としていました:

  • 光速度不変の原理(真空中での光速は観測者の運動状態に関係なく一定)
  • 相対性原理(物理法則はすべての慣性系で同一)

これにより「同時性は絶対的なものではなく、観測者によって異なる」という革命的な結論が導かれ、時間と空間は絶対ではなく相対的な概念であることが明らかになりました。しかし、特殊相対論は重力を考慮しておらず、重力場や加速度を伴う現象を記述することができませんでした。

3.リーマン幾何学と一般相対性理論(1915年)

特殊相対性理論からさらに一般的な理論を構築する際、アインシュタインは数学的手法として「リーマン幾何学」を採用しました。これは19世紀にベルンハルト・リーマンが提唱した非ユークリッド幾何学で、曲がった空間(曲率を持つ多様体)を数学的に記述するための理論です。

アインシュタインはこのリーマン幾何学を用いて、「重力は空間と時間(時空)の歪みである」という新たな概念を提唱します。これが1915年に完成した「一般相対性理論」です。

ニュートン力学の「重力=力」という考え方に対して、アインシュタインは「質量やエネルギーが時空を曲げ、その歪みによって物体が運動する」と考えました。この理論は、水星軌道の近日点移動や重力レンズ現象、後にはブラックホールや宇宙膨張の理解にも貢献しています。

4.プランクユニットと量子論への影響

20世紀初頭、マックス・プランクがエネルギーの最小単位(プランク定数)を導入したことで、量子力学が始まりました。アインシュタイン自身も光電効果の理論でこの量子概念を採用しています(1905年の業績でノーベル賞受賞)。プランクの研究はアインシュタインに、自然界の最小単位を考えることで、空間や時間の量子化というアイデアを与えました。

アインシュタインは晩年、一般相対性理論と量子力学を統一する理論を追い求めました。しかし、量子論の不確定性原理や確率論的解釈に強い抵抗を感じ、「神はサイコロを振らない」という言葉を残しています。

5.アインシュタインの生涯の研究到達点(~1955年)

一般相対性理論の後、アインシュタインは理論の完成を目指して重力と電磁気力の統一理論(統一場理論)の構築を試みましたが、彼の存命中に完成には至りませんでした。

  • 一般相対論以降のアインシュタインの研究テーマ:
    • 重力と電磁気の統一(統一場理論)
    • 量子力学の批判的検討と量子重力理論の模索
    • 宇宙論的モデル(宇宙定数導入と撤回)

アインシュタインの研究は、一般相対論の先にある「統一場理論」という夢に生涯をかけて追求されましたが、量子力学との融合や、より包括的な理論(現在でいう量子重力理論、超ひも理論、ループ量子重力理論など)への突破口を見つけることはできませんでした。

アインシュタインが特殊相対性理論および一般相対性理論を構築する際に用いた数学的・幾何学的ツールは主に以下のようになります。各理論に分けて整理して説明します。


特殊相対性理論(Special Relativity)に用いた数学ツール

特殊相対性理論(Special Relativity)は、主に代数的手法が中心です。

① ローレンツ変換(Lorentz transformations)

特殊相対論の基本的な数学的ツールで、速度に近い運動をする観測者間の座標変換を表します。

特殊相対論の基本的な数学的ツールで、速度に近い運動をする観測者間の座標変換を表します。 t′=γ(t−vx/c2)

x′=γ(x−vt)

y′=y

z′=z

ここで、

  • c は真空中の光速度、
  • vは相対的な運動速度、
  • γはローレンツ因子(Lorentz factor):
\[\gamma = \frac{1}{\sqrt{1 – \frac{v^2}{c^2}}}\]

② 四元ベクトル(Four-vector)

時間と空間を1つの4次元ベクトルとして扱います。

\[X^\mu = (ct, x, y, z)\]

③ ミンコフスキー空間(Minkowski space)

時空を融合させて4次元空間(時空間)として幾何学的に記述します。

  • ミンコフスキー距離(不変間隔):
\[ds^2 = – c^2 dt^2 + dx^2 + dy^2 + dz^2\]

一般相対性理論(General Relativity)に用いられた数学ツール

一般相対論では、重力を幾何学(リーマン幾何学)を用いて表現します。

① リーマン幾何学(Riemannian Geometry)

時空を曲がった空間(リーマン多様体)として捉え、質量・エネルギーの存在による曲率を扱います。

  • 計量テンソル (Metric Tensor) gμν​
    空間と時間の歪みを表現するテンソル。
\[ds^2 = g_{\mu\nu}dx^\mu dx^\nu\]
  • クリストッフェル記号 (Christoffel symbols) Γμνρ
    時空の歪みの中での測地線(自由落下する物体の軌道)を計算する際に使用されます。
\[\Gamma^\rho_{\mu\nu} = \frac{1}{2}g^{\rho\sigma}\left(\partial_{\mu}g_{\sigma\nu}+\partial_{\nu}g_{\sigma\mu}-\partial_{\sigma}g_{\mu\nu}\right)\]
  • リーマン曲率テンソル (Riemann curvature tensor) \[R^\rho_{\sigma\mu\nu}\]
    空間がどのように曲がっているかを表します。
\[R^\rho_{\sigma\mu\nu} = \partial_\mu \Gamma^\rho_{\nu\sigma} – \partial_\nu \Gamma^\rho_{\mu\sigma} + \Gamma^\rho_{\mu\lambda}\Gamma^\lambda_{\nu\sigma} – \Gamma^\rho_{\nu\lambda}\Gamma^\lambda_{\mu\sigma}\]
  • リッチテンソル (Ricci Tensor) RμνR_{\mu\nu}Rμν​
    空間の曲率をまとめる役割を持つテンソル(曲率テンソルの収縮)です。
\[R_{\mu\nu} = R^\alpha_{\mu\alpha\nu}​\]
  • スカラー曲率 (Scalar curvature) RRR
    リッチテンソルをさらに収縮させた量。
\[R = g^{\mu\nu} R_{\mu\nu}​\]
  • アインシュタイン方程式 (Einstein Field Equations)
    質量・エネルギーが時空の曲率を決定する基礎方程式。
\[R_{\mu\nu} – \frac{1}{2}R\,g_{\mu\nu} = \frac{8\pi G}{c^4} T_{\mu\nu}​\]

(ここで、Tμν​はエネルギー運動量テンソルで、物質やエネルギーの分布を記述しています。)

晩年の研究(統一場理論)

アインシュタインは晩年、「重力」と「電磁力」の統一を目指し、統一場理論(Unified Field Theory)を追求しました。そのために、以下の数学的手法を利用しました。

  • 一般化された計量テンソル(非対称テンソル)の検討
  • 微分幾何学・多様体理論の拡張(アフィン接続、非対称性テンソルの導入)

しかし、これらは未完成であり、具体的な完成した公式を提示するには至っていません。


まとめ(アインシュタインの数学的手法)

理論主要な数学的ツール
特殊相対性理論ローレンツ変換、ミンコフスキー幾何学、四元ベクトル
一般相対性理論リーマン幾何学(計量テンソル、リーマン曲率テンソル、アインシュタイン方程式)
量子論・プランク単位プランク長、プランク時間、プランク質量
統一場理論(未完成)微分幾何学の一般化、非対称テンソルの探索

これらの数学的・幾何学的ツールが、アインシュタインの理論物理学研究を支えました。

① 計量テンソル(Metric Tensor)とは

計量テンソル(記号: gμν​)は、一般相対性理論における時空(空間と時間)の幾何学的性質を記述するテンソルです。

具体的には以下の役割を持ちます:

  • 距離や角度の測定
  • 時空間の曲がり具合の表現(曲率)
  • 時空内での内積(ベクトル間の積)の定義

計量テンソルは対称性を持っています: gμν=gνμ

つまり、インデックスを入れ替えても値は変わりません。一般相対性理論では通常この対称な計量テンソルを用いています。

計量テンソルを用いた距離の表現(線素)

時空の小さな距離(不変間隔)は次のように表されます:

\[ds^2 = g_{\mu\nu}\,dx^\mu\,dx^\nu\]

例えば、特殊相対性理論におけるミンコフスキー空間では、計量テンソルは対角的な形を取り、以下のようになります:

\[g_{\mu\nu} = \eta_{\mu\nu} = \begin{pmatrix} -1 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}​​\]

② 非対称テンソル(Asymmetric Tensor)とは

非対称テンソルとは、テンソルのインデックスを交換した時に値が変化する性質を持つテンソルです。具体的には、 Tμν≠Tνμ​

となります。

  • 対称テンソル(symmetric tensor):インデックス交換で値が変わらない Sμν​=Sνμ​
  • 反対称テンソル(完全非対称テンソル)(antisymmetric tensor):インデックス交換で符号が変わる Aμν​=−Aνμ​
  • 非対称テンソル(asymmetric tensor):インデックス交換しても上記2つの条件に当てはまらず、不規則な変化をする(単純な対称性がない)

非対称テンソルの一例として、一般相対性理論では通常使われませんが、アインシュタインが晩年取り組んだ統一場理論(Unified Field Theory)の一部に現れることがあります。彼は計量テンソルの対称性を緩和し、「非対称計量テンソル(Asymmetric metric tensor)」を導入して電磁場と重力場を統一しようと試みました。しかし、これは未完成で、現代の標準的理論(一般相対論)では、計量テンソルは常に対称的に定義されています。


アインシュタインの「非対称計量テンソル」の意図(晩年の統一場理論の試み)

アインシュタインが晩年研究した統一場理論では、電磁場を重力場の幾何学的な性質の中に取り込むために、計量テンソルの対称性を解除し、「非対称な部分」を導入しました: gμν≠gνμ​

この場合、テンソルは以下のように分解できます: \[g_{\mu\nu} = g_{(\mu\nu)} + g_{[\mu\nu]}\]

  • g(μν)​ は対称成分
  • g[μν]​ は反対称成分(電磁場を表すと考えられた部分)

しかし、この方法は理論的な問題が多く、アインシュタイン自身も完成できず、現代物理学の主流とはなっていません。電磁場は現在ではゲージ理論(場の量子論)として別のアプローチで扱われています。


まとめ(結論)

  • 計量テンソルは一般相対論において時空の曲率を記述する基礎的なテンソルであり、常に対称です。
  • 非対称テンソルは一般相対論の標準的理論には登場せず、アインシュタイン晩年の統一場理論の研究において「非対称計量テンソル」として考案されましたが、成功した理論には至っていません。

現代物理学では、計量テンソルは常に対称として扱われ、非対称テンソルは、主に電磁場や他の物理量を記述する別の数学的対象として扱われています。