宇宙が終わる瞬間の状況と予測シナリオ

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宇宙が終わる瞬間の状況と予測シナリオ

現在の宇宙論では、宇宙の終焉に関していくつかの主要なシナリオが提唱されています。それぞれのシナリオは、一般相対性理論、宇宙の加速膨張の観測データ(特に超新星Ia型の測定)、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)、ダークエネルギーの性質などに基づいて予測されています。

1. ビッグフリーズ(Big Freeze)または熱的死(Heat Death)

概要

  • 宇宙が無限に膨張し続け、最終的にすべてのエネルギーが均一に分布し、熱力学的に最大エントロピー状態に達する。
  • 銀河間の距離が広がりすぎて、エネルギーのやり取りができなくなる。
  • 恒星が燃え尽き、ブラックホールもホーキング放射で蒸発することで、物理的な活動が停止する。

理論的根拠

  • 宇宙の加速膨張(ダークエネルギー):
    • 超新星Ia型の観測(1998年)によって、宇宙の膨張が加速していることが判明。フリードマン方程式(宇宙の膨張を記述する基本方程式)にダークエネルギー項を追加すると、宇宙が加速膨張し続けることが示唆される。
    \[H2=8πG3ρ−ka2+Λ3H^2 = \frac{8\pi G}{3} \rho – \frac{k}{a^2} + \frac{\Lambda}{3}H2=38πG​ρ−a2k​+3Λ​\]
    • ここで、Hはハッブルパラメータ、ρ\rhoρ は物質密度、Λ Lambdaは宇宙定数(ダークエネルギー)、kは曲率項。
  • エントロピー増大の法則(熱力学第二法則)
    • 恒星が燃え尽き、ブラックホールが蒸発し、物質が最終的に熱平衡に達する。
    • 最終的に熱的死(Heat Death)状態になり、物理的な活動が停止する。

計算による予測

  • ダークエネルギーが宇宙定数(Λ)として一定である場合:
    • 宇宙は指数関数的に膨張を続け、恒星が燃え尽きた後、10^{100} 年程度でブラックホールが蒸発し、最終的に無活動な宇宙に到達する。

2. ビッグリップ(Big Rip)

概要

  • ダークエネルギーが「宇宙定数」ではなく、時間とともに増大する場合、膨張が加速しすぎて宇宙の構造そのものが引き裂かれる
  • 銀河 → 恒星 → 惑星 → 原子 → 素粒子の順に、引力が膨張の力に打ち負かされ、宇宙のあらゆる構造がバラバラになる。

理論的根拠

  • ダークエネルギーの状態方程式
  • \[w=Pρw = \frac{P}{\rho}w=ρP​\]
    • ここで、Pはダークエネルギーの圧力、ρ はダークエネルギーのエネルギー密度。
    • 現在の観測値では w≈−1w (宇宙定数)に非常に近いが、もし w<−1ならば、ダークエネルギーは増大し、有限時間内に無限大に発散する。

計算による予測

  • ダークエネルギーの指数増大モデルを用いると、現在から約22億年後にビッグリップが起こる可能性があると計算される(Caldwell et al., 2003)。

3. ビッグクランチ(Big Crunch)

概要

  • ダークエネルギーがもし存在しない、もしくは減少する場合、宇宙の膨張はやがて減速し、最終的に収縮し始める。
  • 収縮が進むと、すべての物質が再び超高密度の状態に戻り、ビッグバンの逆過程のような状態になる。

理論的根拠

  • フリードマン方程式において、宇宙の曲率 k が正で、物質密度 ρ が臨界密度を超える場合、宇宙は収縮に転じる。
  • \[H2=8πG3ρ−ka2H^2 = \frac{8\pi G}{3} \rho – \frac{k}{a^2}H2=38πG​ρ−a2k​\]
    • Λ=0\Lambda ならば、ある時点で H が負になり、収縮が始まる。

計算による予測

  • 宇宙が収縮し始める時期は、物質密度やダークエネルギーの振る舞いに依存。
  • もしダークエネルギーが減少するなら、数百億年後にビッグクランチが起こる可能性がある。

4. 偽の真空崩壊(False Vacuum Decay)

概要

  • 現在の宇宙が「偽の真空状態(False Vacuum)」にあり、ある瞬間に「真の真空(True Vacuum)」に転移すると、宇宙が一瞬で消滅する可能性がある。

理論的根拠

  • ヒッグス場のポテンシャルエネルギー
    • 標準模型では、ヒッグス場のポテンシャル形状によって、宇宙が本当に安定かどうかが決まる。
    • 現在の理論では、宇宙は「準安定状態」にある可能性があり、あるエネルギー摂動によって真空崩壊が起こるかもしれない。

計算による予測

  • ヒッグス粒子の質量(125 GeV)とトップクォークの質量(172 GeV)に基づくと、宇宙は準安定だが、真空崩壊の確率は非常に低い。
  • もし崩壊が始まれば、光速で真空崩壊が広がり、宇宙が即座に消滅する。

結論

シナリオ根拠予測される時間スケール
ビッグフリーズ(熱的死)宇宙定数Λが一定10^100 年後
ビッグリップダークエネルギーが指数関数的に増加約 22 億年後
ビッグクランチダークエネルギーが減少する場合数百億年後
偽の真空崩壊ヒッグス場のポテンシャルエネルギーいつでも起こる可能性あり

現時点ではビッグフリーズが最も有力ですが、ダークエネルギーの性質次第で他のシナリオもあり得ます。