地球に存在する94の元素と118番までの人工元素

地球上で自然に発見される元素は、全部で94種類です。

具体的には、水素(原子番号1)からプルトニウム(原子番号94)までです。
ただし、この94種類の中で、
- 安定同位体を持つ元素は80種類(鉛までの元素のうちテクネチウムとプロメチウムを除く)
- 安定同位体を持たないが、地球上で天然に存在する元素は14種類(例:ウラン、トリウム、プルトニウムなど)
があります。
地球を構成する元素一覧(原子番号順)
原子番号 | 元素記号 | 元素名 | 存在量(質量%) | 主な採取方法 |
---|---|---|---|---|
1 | H | 水素 | 0.14 | 水の電気分解 |
2 | He | ヘリウム | 微量(無視可能) | 天然ガスの精製 |
3 | Li | リチウム | 微量(無視可能) | リチウム鉱石の精製 |
4 | Be | ベリリウム | 微量(無視可能) | ベリル鉱石の精製 |
5 | B | ホウ素 | 微量(無視可能) | ホウ砂鉱石の精製 |
6 | C | 炭素 | 0.02 | 石炭の採掘 |
7 | N | 窒素 | 微量(無視可能) | 空気の分留 |
8 | O | 酸素 | 46.6 | 空気の分留 |
9 | F | フッ素 | 微量(無視可能) | 蛍石の精製 |
10 | Ne | ネオン | 微量(無視可能) | 空気の分留 |
11 | Na | ナトリウム | 2.8 | 岩塩の電気分解 |
12 | Mg | マグネシウム | 2.1 | 海水の電気分解 |
13 | Al | アルミニウム | 8.1 | ボーキサイトの電気分解 |
14 | Si | ケイ素 | 27.7 | ケイ砂の還元 |
15 | P | リン | 0.11 | リン鉱石の熱還元 |
16 | S | 硫黄 | 0.03 | 硫黄鉱床の採掘 |
17 | Cl | 塩素 | 0.19 | 食塩水の電気分解 |
18 | Ar | アルゴン | 微量(無視可能) | 空気の分留 |
19 | K | カリウム | 2.6 | カリ岩塩の電気分解 |
20 | Ca | カルシウム | 3.6 | 石灰石の熱分解 |
21 | Sc | スカンジウム | 微量(無視可能) | 希土類鉱石の副産物 |
22 | Ti | チタン | 0.57 | チタン鉱石の還元 |
23 | V | バナジウム | 微量(無視可能) | バナジウム鉱石の精製 |
24 | Cr | クロム | 0.01 | クロム鉱石の還元 |
25 | Mn | マンガン | 0.1 | マンガン鉱石の還元 |
26 | Fe | 鉄 | 5.0 | 鉄鉱石の還元 |
27 | Co | コバルト | 微量(無視可能) | コバルト鉱石の精錬 |
28 | Ni | ニッケル | 0.01 | ニッケル鉱石の還元 |
29 | Cu | 銅 | 0.006 | 銅鉱石の精錬 |
30 | Zn | 亜鉛 | 0.005 | 亜鉛鉱石の還元 |
31 | Ga | ガリウム | 0.0015 | アルミニウム精錬時の副産物 |
32 | Ge | ゲルマニウム | 微量(無視可能) | 亜鉛精錬の副産物 |
33 | As | ヒ素 | 微量(無視可能) | ヒ素鉱石の精製 |
34 | Se | セレン | 微量(無視可能) | 銅精錬の副産物 |
35 | Br | 臭素 | 微量(無視可能) | 海水の蒸発精製 |
36 | Kr | クリプトン | 微量(無視可能) | 空気の分留 |
37 | Rb | ルビジウム | 0.003 | リチウム鉱石の精製副産物 |
38 | Sr | ストロンチウム | 0.0026 | ストロンチウム鉱石の還元 |
39 | Y | イットリウム | 微量(無視可能) | 希土類鉱石の精製 |
40 | Zr | ジルコニウム | 0.016 | ジルコン砂の還元 |
41 | Nb | ニオブ | 微量(無視可能) | ニオブ鉱石の精製 |
42 | Mo | モリブデン | 0.0001 | モリブデン鉱石の精製 |
43 | Tc | テクネチウム | 微量(無視可能) | 人工元素(自然界に存在せず) |
44 | Ru | ルテニウム | 微量(無視可能) | 白金族鉱石の精製 |
45 | Rh | ロジウム | 微量(無視可能) | 白金族鉱石の精製 |
46 | Pd | パラジウム | 微量(無視可能) | 白金族鉱石の精製 |
47 | Ag | 銀 | 7e-05 | 銀鉱石の精錬 |
48 | Cd | カドミウム | 0.0001 | 亜鉛精錬の副産物 |
49 | In | インジウム | 微量(無視可能) | 亜鉛精錬の副産物 |
50 | Sn | スズ | 0.0002 | スズ鉱石の精錬 |
51 | Sb | アンチモン | 微量(無視可能) | アンチモン鉱石の精製 |
52 | Te | テルル | 微量(無視可能) | 銅精錬の副産物 |
53 | I | ヨウ素 | 微量(無視可能) | 海水および鉱石の精製 |
54 | Xe | キセノン | 微量(無視可能) | 空気の分留 |
55 | Cs | セシウム | 微量(無視可能) | ポルックス鉱石の精製 |
56 | Ba | バリウム | 0.04 | 重晶石の還元 |
57 | La | ランタン | 0.003 | 希土類鉱石の分離精製 |
58 | Ce | セリウム | 0.003 | 希土類鉱石の分離精製 |
59 | Pr | プラセオジム | 微量(無視可能) | 希土類鉱石の分離精製 |
60 | Nd | ネオジム | 0.002 | 希土類鉱石の分離精製 |
61 | Pm | プロメチウム | 微量(無視可能) | 人工元素(自然界に存在せず) |
62 | Sm | サマリウム | 0.0006 | 希土類鉱石の分離精製 |
63 | Eu | ユウロピウム | 0.0002 | 希土類鉱石の分離精製 |
64 | Gd | ガドリニウム | 0.0003 | 希土類鉱石の分離精製 |
65 | Tb | テルビウム | 0.0001 | 希土類鉱石の分離精製 |
66 | Dy | ジスプロシウム | 0.0005 | 希土類鉱石の分離精製 |
67 | Ho | ホルミウム | 0.0001 | 希土類鉱石の分離精製 |
68 | Er | エルビウム | 0.0003 | 希土類鉱石の分離精製 |
69 | Tm | ツリウム | 5e-05 | 希土類鉱石の分離精製 |
70 | Yb | イッテルビウム | 0.0003 | 希土類鉱石の分離精製 |
71 | Lu | ルテチウム | 5e-05 | 希土類鉱石の分離精製 |
72 | Hf | ハフニウム | 0.0003 | ジルコニウム鉱石の精製副産物 |
73 | Ta | タンタル | 0.0002 | タンタル鉱石の精製 |
74 | W | タングステン | 0.0001 | タングステン鉱石の精錬 |
75 | Re | レニウム | 1e-05 | モリブデン精錬の副産物 |
76 | Os | オスミウム | 1e-06 | 白金族鉱石の分離精製 |
77 | Ir | イリジウム | 1e-06 | 白金族鉱石の分離精製 |
78 | Pt | 白金 | 5e-06 | 白金族鉱石の分離精製 |
79 | Au | 金 | 4e-06 | 金鉱石の精錬 |
80 | Hg | 水銀 | 2e-06 | 辰砂の蒸留 |
81 | Tl | タリウム | 微量(無視可能) | 鉛・亜鉛鉱石の精製副産物 |
82 | Pb | 鉛 | 0.0001 | 鉛鉱石の還元 |
83 | Bi | ビスマス | 8e-06 | ビスマス鉱石の精錬 |
84 | Po | ポロニウム | 微量(無視可能) | ウラン鉱石の精製副産物 |
85 | At | アスタチン | 微量(無視可能) | 放射性・非常に稀少(天然では微量) |
86 | Rn | ラドン | 微量(無視可能) | 放射性元素の崩壊生成物 |
87 | Fr | フランシウム | 微量(無視可能) | 放射性(極めて短寿命・天然存在微量) |
88 | Ra | ラジウム | 微量(無視可能) | ウラン鉱石の精製副産物 |
89 | Ac | アクチニウム | 微量(無視可能) | ウラン鉱石の精製副産物 |
90 | Th | トリウム | 6e-05 | モナザイト鉱石の精製 |
91 | Pa | プロトアクチニウム | 微量(無視可能) | ウラン鉱石の副産物 |
92 | U | ウラン | 3e-05 | ウラン鉱石の精製 |
93 | Np | ネプツニウム | 微量(無視可能) | 人工元素(極微量自然存在) |
94 | Pu | プルトニウム | 微量(無視可能) | 人工元素(極微量自然存在) |
原子番号95〜118の元素一覧
95番以降の元素はすべて人工的に合成された元素です。
原子番号 | 元素名 | 発見年 | 生成方法 | 半減期 |
---|---|---|---|---|
95 | アメリシウム | 1944 | 原子炉内での中性子捕獲 | 1,410年(Am-243) |
96 | キュリウム | 1944 | 原子炉内での中性子捕獲 | 1,560万年(Cm-247) |
97 | バークリウム | 1949 | 加速器内での核反応 | 330日(Bk-249) |
98 | カリホルニウム | 1950 | 加速器内での核反応 | 898年(Cf-251) |
99 | アインスタイニウム | 1952 | 水爆実験の核爆発生成物 | 471.7日(Es-252) |
100 | フェルミウム | 1952 | 核爆発生成物 | 100.5日(Fm-257) |
101 | メンデレビウム | 1955 | 加速器内での核反応 | 51.5日(Md-258) |
102 | ノーベリウム | 1958 | 加速器内での核反応 | 58分(No-259) |
103 | ローレンシウム | 1961 | 加速器内での核反応 | 3.6時間(Lr-262) |
104 | ラザホージウム | 1964 | 加速器内での核反応 | 1.3時間(Rf-267) |
105 | ドブニウム | 1967 | 加速器内での核反応 | 28時間(Db-268) |
106 | シーボーギウム | 1974 | 加速器内での核反応 | 1.9分(Sg-271) |
106 | ハッシウム | 1984 | 加速器内での核反応 | 9.7秒(Hs-277) |
107 | ボーリウム | 1981 | 加速器内での核反応 | 61秒(Bh-272) |
108 | ハッシウム | 1984 | 加速器内での核反応 | 9.7秒(Hs-277) |
109 | マイトネリウム | 1982 | 加速器内での核反応 | 7.6秒(Mt-278) |
109 | レントゲニウム | 1994 | 加速器内での核反応 | 26秒(Rg-282) |
110 | ダームスタチウム | 1994 | 加速器内での核反応 | 約10秒(Ds-281) |
111 | レントゲニウム | 1994 | 加速器内での核反応 | 26秒(Rg-282) |
111 | レントゲニウム | 1994 | 加速器内での核反応 | 26秒(Rg-282) |
112 | コペルニシウム | 1996 | 加速器内での核反応 | 29秒(Cn-285) |
113 | ニホニウム | 2004 | 加速器内での核反応 | 20秒(Nh-286) |
114 | フレロビウム | 1999 | 加速器内での核反応 | 1.9秒(Fl-289) |
115 | モスコビウム | 2003 | 加速器内での核反応 | 0.8秒(Mc-290) |
116 | リバモリウム | 2000 | 加速器内での核反応 | 61ミリ秒(Lv-293) |
117 | テネシン | 2010 | 加速器内での核反応 | 51ミリ秒(Ts-294) |
118 | オガネソン | 2006 | 加速器内での核反応 | 0.7ミリ秒(Og-294) |
元素の構成(原子番号による元素種)と半減期は、宇宙空間のどの環境においても基本的に変わりませんが、環境によって次のような違いがあります。
1. 元素の種類と性質について
- 元素の種類は宇宙全体で普遍的に共通です。たとえば、水素(原子番号1)は地球でも宇宙でも同じ元素です。
- 各元素の物理的性質や原子構造(陽子の数、電子配置)も普遍的で、場所や環境によって変化することはありません。
2. 元素の存在比(構成割合)の違い
- 元素の構成比(存在量)は環境ごとに異なります。
地球、太陽、恒星間ガス、星雲、超新星残骸など、宇宙空間の場所によって元素の相対的な存在比率は大きく変わります。 - たとえば:
- 宇宙の一般的な元素比率は約75%が水素、約24%がヘリウム、残り1%がその他元素。
- 地球では酸素、ケイ素、アルミニウムなどが豊富であり、これは宇宙の一般的比率とは大きく異なります。
3. 半減期の普遍性
- 半減期は宇宙のどこでも同じです。
半減期は原子核の特性であり、環境条件(温度や圧力など)には影響されず、場所や時間を問わず一定です。例えば、ウラン238の半減期(約44.7億年)は、地球上でも宇宙のどこでも共通です。
4. 環境による観測される元素組成の差異
- 宇宙の環境(星の内部、高エネルギー現象)では、特定の核反応が進行し、一部の元素が消費・生成されることがあります。そのため、「観測される元素組成」は環境によって異なります。
- 例えば、超新星爆発では鉄より重い元素(例えば金、プラチナ、ウラン)が大量に生成されます。
- 星の中心核では水素からヘリウムへ、さらにはヘリウムから炭素、酸素、窒素などの元素が生成されます。
まとめ
項目 | 宇宙空間での普遍性 | 備考 |
---|---|---|
元素の種類(原子番号) | ✅ 共通 | 宇宙全域で同じ |
元素の性質(原子構造) | ✅ 共通 | どこでも同じ |
元素の存在量・構成比 | ❌ 環境ごとに異なる | 星や惑星などの形成過程により異なる |
半減期(放射性崩壊速度) | ✅ 共通 | 環境に左右されず一定 |
つまり、半減期や元素の本質的な性質は宇宙空間どこでも共通ですが、元素がどれだけ存在しているかは、その環境の形成過程や経緯によって変化します。
最も半減期が長い元素一覧(生成・発掘方法つき)
原子番号 | 元素名 | 同位体 | 半減期 | 単位 | 生成・発掘方法 |
---|---|---|---|---|---|
52 | テルル | 128Te | 2.20 | 杼年(10^24年) | 鉱石精錬の副産物 |
54 | キセノン | 124Xe | 18 | 垓年(10^21年) | 空気の分留 |
83 | ビスマス | 209Bi | 20.1 | 百京年(10^18年) | ビスマス鉱石の精錬 |
90 | トリウム | 232Th | 140.5 | 億年(10^8年) | モナザイト鉱石の精製 |
92 | ウラン | 238U | 44.68 | 億年(10^8年) | ウラン鉱石の精製 |
現在知られている元素の中で、最も半減期が長い元素はテルル、
テルル128(^128Te)の半減期:
- 半減期:約2.2×10²⁴年
- これは宇宙の年齢(約138億年、約1.38×10¹⁰年)よりも遥かに長い時間です。
- この元素は事実上「安定元素」とみなされるほど半減期が長く、自然界にも普通に存在しています。
- 半減期とは?
放射性元素が放射線を出しながら自然に崩壊して、元の元素の量が半分に減るまでの期間のことです。
例えば、ウラン238(^238U)はアルファ崩壊をして、最終的には安定した鉛(Pb)に変化しますが、その過程で「ウランの量が半分になるまで約44億年」かかります。これはあくまでも元素の個数(または量)が半減するという意味であり、原子そのものが軽くなるのではありません。
例:
100個のウラン原子(^238U)があった場合、
- 44.68億年後には約半数(50個)が別の元素(トリウム→鉛)へ崩壊。
- 残り50個は依然としてウランのまま。
- 個々の原子が軽くなるわけではなく、原子数(または物質量)が半減するということです。
崩壊の過程で何が起こるのか?
- 放射性元素はα線(ヘリウムの原子核)、β線(電子または陽電子)、γ線(電磁波)を放出して別の元素へと変化します。
- 元の元素が放射線を放出して別の元素に変化することで、元の元素の数が徐々に減少します。
例:ウラン238が崩壊すると、アルファ粒子(ヘリウム核)を出してトリウム234になり、さらに次々と崩壊して最終的には鉛(^206Pb)へと安定します。
まとめ(混同されやすいポイント):
よくある誤解 | 正しい理解 |
---|---|
半減期が経つと元素が軽くなる | × |
半減期が過ぎると元素の量(原子数)が半分になる | ◯ |
元素が崩壊すると別の元素に変わる | ◯ |
つまり、「半減期が過ぎると原子が軽くなる」のではなく、「放射性元素の原子数が半分になり、別の元素へと変化する」という意味です。