スタートアップにとって喜びは「罠」、悲しみは「負債」、怒りは「行動」の原動力である Emotional Energy Budgeting System™

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スタートアップにとって喜びは「罠」、悲しみは「負債」、怒りは「行動」の原動力である Emotional Energy Budgeting System™

やる気は有限の資産である。Emotional Energy Budgeting System™

「やる気」の原材料はフリーエネルギーだが、感情エネルギーを適切に調達、生産、出荷、着荷させないと「やる気」による報酬(Emotional Energy Materializationは得ることができず、拡大に伴うスケーラビリティについて計画投資し、受注生産管理をしておかないとエネルギーが枯渇するEmotional Energy Budgeting System™

1. 感情の誤解が意思決定を狂わせる

スタートアップでは、創業者や経営陣が日々の意思決定に直面する。感情は判断に大きな影響を与えるが、適切に整理しなければ、誤った選択を招く可能性がある。特に「悲しみ」と「怒り」の取り扱いが重要だ。

  • 悲しみ(Sadness):過去の失敗や損失を振り返り、停滞や反省を生む感情 Non-Action Oriented Emotion™
  • 怒り(Anger):行動を促進し、変革を推し進めるエネルギー Action-Oriented Emotion™
  • 悲しみから怒りへの変換:Emotional Momentum Conversion™

2.感情の6分類

アメリカの心理学者ポール・エクマンは1970年代に表情を6つの基本感情に分類した。

主要な感情(怒り、嫌悪、恐怖、喜び、悲しみ、驚き)に対応するホルモン物質や体の反応。

感情主なホルモン物質体の反応・生理的変化
怒り(Anger)アドレナリン(Adrenaline)、ノルアドレナリン(Norepinephrine)、コルチゾール(Cortisol)– 心拍数・血圧上昇、呼吸が浅く速くなる
– 筋肉の緊張、交感神経活性化(戦うor逃げる)
– 判断力の低下(冷静な思考が難しくなる)
嫌悪(Disgust)セロトニン(Serotonin)、ドーパミン(Dopamine)、オキシトシン(Oxytocin)– 眉をひそめ、顔をしかめる
– 胃腸の活動低下、吐き気を感じる(異物を排除するため)
– 社会的な距離を置こうとする行動(オキシトシンの減少)
驚き(Surprise)アドレナリン(Adrenaline)、ドーパミン(Dopamine)– 瞳孔が拡張、瞬間的な集中力向上
– 呼吸が一瞬止まり、その後速くなる
– 交感神経活性化、状況を素早く分析しようとする
恐怖(Fear)アドレナリン(Adrenaline)、ノルアドレナリン(Norepinephrine)、コルチゾール(Cortisol)– 心拍数・血圧上昇、瞳孔が拡張
– 血糖値上昇(エネルギー確保)
– 交感神経活性化(戦うor逃げる)
喜び(Joy)ドーパミン(Dopamine)、セロトニン(Serotonin)、エンドルフィン(Endorphin)、オキシトシン(Oxytocin)– 幸福感、リラックス、ポジティブな思考
– 血圧・心拍数の安定、呼吸が深くなる
– 免疫機能の向上(ストレスホルモンの減少)
悲しみ(Sadness)コルチゾール(Cortisol)、セロトニン(Serotonin)、プロラクチン(Prolactin)– 意欲の低下、無力感
– 副交感神経が優位になり、体の活動が低下
– 免疫力低下、体の痛みや疲労を感じやすくなる

Action Oriented Emotion™(行動を生み出す):怒り、嫌悪、驚き→交感神経系を活性化し、短期的な行動を引き起こす。
Non-Action Oriented Emotion™(行動を抑制・調整する):喜び、悲しみ→副交感神経系を優位にし、長期的な意思決定や社会的適応を促す。

Forced Emotion 恐怖→状況によって行動を引き起こす場合(逃げる・戦う)もあるため、選択を強いられる制限時間付きの境界的な位置にある。

3. 悲しみ=「負債」感情負債

3.1. スタートアップにおける「悲しみ=負債」の構造 Non-Action Oriented Emotion™

悲しみは、過去の失敗や未達の目標に対する内向的な反応として蓄積する。この感情が蓄積すると、以下のような悪影響が出る。

  • 行動の抑制:新しいチャレンジを恐れ、決断を先送りする
  • リスク回避の増加:事業の拡大や投資に対して慎重になりすぎる
  • 精神的負債の蓄積:チームの士気が低下し、モチベーションが失われる

副交感神経を優位にする喜び、悲しみは、現実の行動に結びついていない。現実の行動を生むのはほとんどが怒り、嫌悪、驚きを最小化したいというLocal Minimum的な反応のなす結果である。喜びや感情は長期的な意思決定に使われるため、先行投資のようなものである。悲しみで動けなくなる経営者は、固定費が過剰に積み上がり、キャッシュフローを圧迫する企業財務の構造に似ている。喜びも注意である。喜びはそこで行動が完結してしまい、通常は次のアクションを始めるために「怒り、嫌悪、驚き」などのAction-Driven Emotionが必要となる。悲しみ、喜びというNon-Action Emotionを適切に整理し、Action-Driven Emotionに変換しなければ、企業の成長を妨げる要因となる。

3.2. 「怒り=行動」の原動力に変換する Emotional Momentum Conversion™

一方で、怒りは行動を促進する力を持つ。「なぜこの結果になったのか?」「どうすれば打開できるのか?」といった問いを生み、現状を嫌悪することで実行を後押しする。将来的に自分の予測と現実のサプライズを減らす(ダイバージェンスの最小化)をするためにアクションする。スタートアップにとって、怒りは以下のような形で活用できる。

  • 現状に関する嫌悪感を刺激し、原動力をつくる
    • 業界の非効率に対する怒り → 差別化戦略の推進
    • 顧客の需要に対して、プロダクトが処理できない遅さ、不便さへの怒り → プロダクト改善の意欲向上
  • 経営課題を打破するエネルギーとなる
    • 予期せぬトラブル → 驚きを得たことを怒りに変換してAction Driven Emotionで解決策を模索

4. 「悲しみを怒りに変換する」ことで突破力を得る

スタートアップが継続的に成長するためには、悲しみを蓄積するのではなく、怒りとして再構築し、行動に変換することが重要である。(Emotional Momentum Conversion™)

  • 失敗の受け止め方を変える
    • 悲しみ:「やっぱりダメだった」→ 負債として蓄積
    • 怒り:「何がダメだったのか、後悔を最小化したい」→ 行動につなげる
  • 適切な意思決定のためのフレームワーク
    • 「この感情は行動を生むものか?」と問いかける
    • 「この怒りをどう未来の後悔最小化のために活用するか?」を具体的に計画する

Regret Minimization Theory(後悔最小化理論)とは?

Regret Minimization Theory™(後悔最小化理論)は、「未来から過去を振り返った際に後悔が最も少なくなる選択を取る」という考え方。ビジネスや人生の意思決定において、短期的なリターンや快適さではなく、長期的な視点で見た「後悔の少ない選択」を追求することをTANAAKKのGAASでは推奨しています。これは物理学において「自然界の物体はすべて、目的地まで最小のエネルギーや効率的な経路(作用量が最も少ない経路)を選択する」というLeast Action Principle™(最小作用の原理)と同様の仕組みです。これは自然現象がランダムではなく、常に最も効率的な経路を取っていることを示しています。

5.喜びは「罠」:成長にとって要注意な感情

買い物をすることでやる気を作る、うまくいったらご褒美をもらうといった喜びの感情は、副交感神経を優位にする作用を持つため、行動がそこで完結してしまう。ドーパミン、セロトニン、オキシトシン、エンドルフィンなどの報酬ホルモンが出て、行動は完結する。(Non-Action Oriented Emotion™)

報酬ホルモンのみの課題はその後の行動を喚起しないことである。 報酬ホルモンを得た後に、更なる原動力を得る必要がある。(怒りなどのAction Oriented Emotion™)例えば、買い物をしてある程度満足したが、値札を見る必要があったので自由に好きなものを買えなかったという怒りを得ることで、さらに収入を増やすというモチベーションを得るというような喜び→怒りのステージ遷移方法を得る必要がある。ご褒美を買ったことについて本当に喜んでいるようであれば、そこで感情は完結し、行動は停滞してしまっているのだ。喜びのあとは必ず怒りを発見し、未来の行動を計画する必要がある。

6.恐怖は使用法が難しい感情 Forced Emotion

恐怖という感情は停滞と闘争の二つのアクションのどちらかを引き起こす。逃げる、戦う、動かないの3パターンがある。例えばノルマが達成できなかったら怒られるなどの恐怖を用いた目標管理方法は、「戦う」を選択する人にとっては効果的だが、「逃げる」「動かない」パターンも同時に引き起こしてしまうため、プロンプトとして適切ではない。

7.感情は仕入れないと足りなくなる Emotional Energy Production System(EEPS)

人間はすぐ燃え尽き症候群になる。稼ぎを増やしたいといっていた人も、いざ目標であった収入を達成すると周りには更なる目標を主張しながら、実は燃え尽き症候群でかつてのような推進力を失っているケースが大半だ。スタートアップで会社を大きくすると意気込んでいた人も、部下が増えてくると、年商が10億くらいで部下がいることに満足してしまう(または情報処理できなくなり燃え尽きる)ケースも多い。常にLess Local Minimum™(局所最適を抜けて上位の最適解を探すこと)に上昇していく力を得るためには意図的なEmotional Energy Production System™を構築する必要がある。 意図的に高すぎる目標を設定し、到達できない「悲しみ」を仕入れたり(Emotional Energy Procurement™)、現状に対する「嫌悪」に変換し(Emotional Energy Processing™)、行動を喚起するための「怒り」に変換する(Emotional Energy Production™)。

8.感情の出荷不良 Common Failure of EEPS™

キャパシティオーバー

仕入れる「怒り」が大きすぎると負荷超過のオーバーロード(Overload)になり、キャパオーバー(Capacity Over)になって、そのまま品質不良の感情を「怒り」として周囲にぶつけてしまうがこれはよくある品質不良の誤りだ。

スクラップレート(感情廃棄率)

感情がスクラップになってしまって誰にも受け止められない。Scrap Rate(感情廃棄率)を低くするためにはProduction Yield(感情出荷の歩留)を管理する必要がある。

スループット制約(Theory of constraint

前項で触れた通り、感情は仕入れに制限のある有限のエネルギーである。一人一人の感情製造処理のスループットには制約(Theory of constraint)がある。

感情の予実管理(Emotional Energy Budgeting System)

仕入れた怒り(Emotional Energy Procurement™)は必ず自分というフィルター関数を通して(Emotional Energy Processing™)、加工して(Emotional Energy Production™)から出荷(Emotional Energy Delivery™))する必要がある。「怒り」は指向性のある強い力であるため、抵抗のあるところに放出しようとするのではなく、怒りのエネルギーが吸収される場所を蜘蛛の糸をたぐるように探し、需要のある場所(Emotional Energy Demand Matching™)を見つけたら少しずつ放出(Emotional Energy Built-to-Order受注生産)、組織的な回路ができたら一気に量産化放出(Emotional Energy Mass Production)感情の量産化)していくべきである。

False Material Shortage(偽の原材料不足)

感情エネルギーの源泉はフリーエネルギーであり、限りなく無限に近い形で存在する。見かけ上の原材料不足はデータの誤認識であり、実際には製造スループット、需要、ロジスティクスの問題である。

9.適切なエネルギー分量の調節 Emotional Energy Just-in-Time™

需要、生産、調達のそれぞれを調整するのは難しい。例えば事業を1つしかしていないと感情エネルギーが有り余ってしまい、無駄な指示を出してしまう場合もある。感情が余ってしまう場合は、適切な出荷場所を探す必要がある。感情もEmotional Energy Just-in-Time方式にしないと、スクラップとなってしまうのだ。

10. やる気=スケーラブルな「感情エネルギー生産体制」がスタートアップの成功を左右する

財務管理がキャッシュフローの健全性を決定するように、感情管理が意思決定の質を左右する。「悲しみを負債とせず、怒りを投資の原動力に変換する」というフレームワークを持つことで、スタートアップは停滞することなく、持続的な成長を実現できる。これは製造業で工場に先行投資し、売上が増加するにつれて固定費の一部を変動費に転換し、売上の増減に応じてエネルギーを上げ下げする財務戦略に似ている。

「やる気」の原材料はフリーエネルギーだが、感情エネルギーを適切に調達、生産、出荷、着荷させないと「やる気」による報酬(Emotional Energy Materialization)は得ることができず、受注生産管理をしておかないとエネルギーが枯渇する(False Material Shortage

また、規模が増えてくると、大きな組織を引っ張るエネルギーがさらに必要となるので、Emortional Energy Scalability™について、組織的な予実管理をする必要がある。Emotional Energy Budgeting System™

補足:27種類の感情分類

2017年にカリフォルニア大学バークレー校アラン・S・コーウェン(Alan S. Cowen)ダッシャー・ケルトナー(Dacher Keltner)によって分類。 この研究では、2,185本の短い動画クリップを用いて、853名の被験者の感情反応を分析。​その結果、従来の6つの基本感情モデルを超える、27種類の感情カテゴリーが特定されている。以下カテゴリー、ホルモン、反応については研究出典ではない補足事項。

カテゴリー感情主なホルモン・神経伝達物質主な体の反応・行動
✅ Action-Driven(行動を促す感情)怒り(Anger)アドレナリン、ノルアドレナリン、コルチゾール闘争・対抗行動(攻撃、反論、競争心の高まり)
嫌悪(Disgust)セロトニン、ドーパミン拒絶・排除(距離を取る、吐き気、嫌悪の表情)
興奮(Excitement)ドーパミン、アドレナリン瞳孔拡張、心拍数上昇、注意集中
熱意(Enthusiasm)ドーパミン、エンドルフィンモチベーション向上、行動の加速
刺激(Stimulation)ドーパミン、アドレナリン交感神経活性化、興奮状態
嫉妬(Jealousy)コルチゾール、ノルアドレナリン競争意識の向上、攻撃性の増加
恐怖(Fear)アドレナリン、ノルアドレナリン、コルチゾール「戦うor逃げる」反応、筋肉緊張、集中力増加
驚き(Surprise)アドレナリン、ドーパミン一時的なショック、瞬間的な集中力向上
戦慄(Horror)アドレナリン、コルチゾール身をすくめる、防御姿勢
罪悪感(Guilt)セロトニン、オキシトシン自己評価の低下、補償行動
誇り(Pride)ドーパミン、オキシトシン自信増加、社会的影響力の向上
勝利(Triumph)ドーパミン、アドレナリンモチベーション向上、達成感
称賛(Admiration)ドーパミン、オキシトシン目標設定、模倣行動
崇拝(Worship)オキシトシン、エンドルフィン帰属意識、集団への忠誠心
カテゴリー感情主なホルモン・神経伝達物質主な体の反応・行動
🟡 境界的な感情(状況次第で行動 or 抑制)ノスタルジア(Nostalgia)セロトニン、オキシトシン記憶の想起、回想行動
共感(Empathy)オキシトシン、セロトニン他者との距離を縮める、協力行動
ロマンス(Romance)オキシトシン、ドーパミン親密な関係を築く、愛情表現
美的鑑賞(Aesthetic Appreciation)ドーパミン、エンドルフィン芸術や自然を楽しむ、リラックス
解放感(Relief)セロトニン、エンドルフィンストレス緩和、深呼吸
カテゴリー感情主なホルモン・神経伝達物質主な体の反応・行動
❌ Non-Action-Based(行動を抑制・調整する感情)悲しみ(Sadness)セロトニン、コルチゾール活動低下、無気力、涙を流す
落ち着き(Calmness)セロトニン、オキシトシン副交感神経活性化、リラックス
当惑(Embarrassment)コルチゾール、ノルアドレナリン行動抑制、赤面、謝罪行動
退屈(Boredom)ドーパミン低下、セロトニン低下やる気の低下、無気力
失望(Disappointment)セロトニン、コルチゾール自己評価の低下、意欲の喪失
混乱(Confusion)コルチゾール、ノルアドレナリン認知負荷の増大、決断の先延ばし
苦痛(Pain)エンドルフィン、コルチゾール身体・精神的な防御反応

別の研究では感情をさらに細分化し、27種類に分類している。

Action-Driven(行動を促す感情)(積極的なエネルギー)
→ 怒り、嫌悪、興奮、熱意、刺激、嫉妬、恐怖、驚き、戦慄、罪悪感、誇り、勝利、称賛、崇拝

🟡 境界的な感情(行動を促すこともあれば、抑制することもある)
→ ノスタルジア、共感、ロマンス、美的鑑賞、解放感

Non-Action-Based(行動を抑制・調整する感情)(内省・静止)
→ 悲しみ、落ち着き、当惑、退屈、失望、混乱、苦痛